相談室・慢性ショック・心の傷・トラウマ・分析・気になるNews・心のケア・実話・家庭内暴力・児童虐待・虐待・離婚・再婚・親と子・子育て

★はじめに(13)(14)(15)(16)17)伝染(心の病は家族に伝染する?)

17.伝染(心の病は家族に伝染する?)

家族という信頼の絆は『安心という土台』があればこそ生まれる。そして、安心という土台は『信頼という絆』を育てる。 つまり、人を信じる心は『親から子へ』伝えられる。

家族とは何? 3人が育てた・・・

慎也は、悠希に対する姿勢を悩みながらも、未奈の視線を土台に・・・気を遣う。
未奈は、悠希と共に暮らす事によって、慎也と悠希への負い目を土台に・・・気を遣う。
悠希は、未奈と慎也に抱く感情は複雑、そんな不安や不信感を土台に・・・気を遣う。

3人が抱える気遣いには違いがあるものの、この気遣いがあればこそ、
相手への労りや思いやりが生まれ、共に、悩みながらも同じ道を歩む事が出来た。

当時、3人が暮らす家庭は1人1人が抱える『不安から生まれた“安心”』を育てていた、が、 3年が過ぎると、慎也は親から学んだ『信頼から生まれた安心』だと確信した。
一方、未奈と悠希も親から学んだ安心の中で育つ家庭崩壊(離婚や死)』に、怯えていた。

まったりとした空気を漂わせる慎也は、ゆったりと時を刻みテレビの前で・・ゴロゴロ。
そんな慎也に笑みをこぼし飛び込んだ悠希は、真似をするように・・ゴロゴロ。
2人は楽しそうに話し声や笑い声を弾ませる。

その姿は、誰が見ても仲の良い親子そのもの、そんな2人が醸し出す空気は、とても穏やかに流れ、楽しそうに弾んでいた。 でも、未奈を包み込む空気は・・真っ黒・・そんな未奈が見ているのは、孤独・怒り・嫉妬・・自分の心に、必死に、ブレーキを踏み続けていた・・が、突然、走り出すと台所にあるカウンターの中へ飛び込んだ。

すると、目を閉じ両手で耳をふさぎ『ダメ、ダメ、視るな、聞くな、聞き流せ・・』と、
必死に感情を抑える・・抑えれば抑えるほど2人の楽しげな声や笑い声が耳に付いた。

そのとき、“我慢の限界”と、叫ぶようにスクッと立ち上がると「うるさい!」と、未奈は目を閉じたまま甲高い声で叫んだ。 すると、自分の声に驚いた未奈が目を見開くと、悠希と目が合い、ちょっぴり怒った顔で未奈を見る慎也の視線を浴びた。

“はっ”と、する未奈は2人の視線を外すように静かに下を向いた。

「買い物へ行かないの?」と、明るく問い掛ける慎也の声。
「行かない」と、下を向いたまま小さな声で・・ブス。
「えっ? じゃぁ、どこかへ出掛けよう」と、再び、慎也の明るい声が響く、
「行きたくない」と、慎也の言葉に素直になれない未奈だった。

心の病は家族に伝染する?(怒りを受けると怒りを学ぶ)

ショッキングな出来事を話す事によって、自分の心が、“二次・三次被害に遭う”、事を知った未奈は・・口を閉ざした。 ところが、慎也は、いつものように未奈へ声を掛ける、すると「うるさい」「止めて」「ヤダ」などの単語を静かに飛ばす未奈は、慎也の口を封じた。

でも、気遣いを消した慎也はマイペースの時を刻む、いつものようにテレビの前で、ゴロゴロ、ゴロゴロ、と・・。 そんな姿を目にする未奈は、ムカムカ、イライラが増殖され、 「そんなところで寝ないでよ」と、理由無き怒りを落とし、まるで、未奈の住処のようになったカウンターの中へ戻った。

そのとき「うるさいんだよ!」と、怒濤の怒りを込めた慎也の大声が鳴り響いた。 その怒りは、お腹の底から絞り出す声、握りしめた拳、震わせる身体・・、全身で表していた。

慎也の怒りの叫びは、見事に未奈の心臓をぶち抜いた、呆然と立ちすくむ未奈。

そんな未奈に驚きながらも『怒鳴る事によって、うるさい未奈の口を封じる事が出来た』 この出来事は、ある意味での爽快感を体験したように、慎也の顔にほんのり笑みが滲んだ。

慎也が学んだ『怒鳴る』という行為は、この時を境に未奈へ飛ばすようになった。
始めは意識して怒鳴っていた行為が、繰り返すことによって、未奈の口が開くと同時に怒鳴る事ができるようになり、慎也の顔には優越感の笑みまでも広がった。

優越感たっぷり

『怒鳴る=爽快感』という流れを知った慎也は、まるで殿様のような優越感も光らせた。

奴隷のように見下げた未奈の口が動こうものなら、その前に怒鳴る。そして優越感に浸る笑みを飛ばす。 そんな慎也に怯える未奈は、語らず笑わず、こっそり涙する時間を増やした。

未奈の心は過去を鮮明にする、“なぜ、生まれてきた”、“なぜ、生きている”、“なぜ、ここにいる”、と、子供の頃に大人たちに言われた言葉が甦る。 そんな過去を噛みしめる未奈は『死にたい』『家を出たい』と、慎也の怒鳴り声を聞く度に心が呟いた。

それでも未奈の足が踏みとどまったのは・・ 「お前は本当の幸せを知らない。だから今の幸せを壊したくなる。“家を出たい”と、思うだろうが絶対にダメだ。 とにかく今は我慢をしろ、今の旦那のような人に、お前が出合う事すら珍しいんだ、いいな、ぐっと我慢をしろ、 自分から壊すんじゃない、よく覚えておけよ」 と、授業中にも関わらず、真剣に訴えた仲田先生(当時、未奈が通う教室の先生)の言葉と声が未奈を支えていた。

そんな時間を刻みながらも未奈はいつものように食事の用意をしていると、なんとなく顔を持ち上げた、 そんな未奈と目が合ったは慎也が、“ニタ~” と飛ばし怒鳴り声も飛ばした。
そんな慎也に反応する未奈は、しゃがみ込むと、声を殺して・・大粒の涙を落とす。

突然、立ち上がった未奈が息を吸い込むと、 「最近の慎也は、怒ってばっかり、怒鳴ってばっかり、そんなに怒ってばかりいるのなら・・ 私は、この家を出て行く、出て行きたーいー」と、慎也に向かって大声を張り上げると泣き崩れた。

その後は・・重く、真っ白な・・空気が流れた。

無意識と意識

当時の慎也が意識して学んだ、“怒鳴るという行為”は、繰り返す事によって、慎也の中で無意識化された。 そのため慎也には、怒鳴っているという自覚すらなかった。

そんな慎也は、未奈の言葉に驚き、制止したまま固まっていた。

この時を境に、慎也は再び意識を取り入れて、怒鳴る行為を抑える。
また、未奈もヒステリックに騒ぐ行為に、意識を組み込んで抑える。

2人は、“無意識”に、“感情的”に、行動してしまう行為に・・意識を取り入れた。

無意識に学んだ “怒りを爆発する行為” は・・
楽しそうに笑みをこぼす慎也が語るように、とても楽に、簡単に・・・できる。

ところが、無意識化された “怒りを爆発する行為を止める” には、意識を取り入れなければならない。 自分の心に、感情に、ブレーキを踏む・・、この流れは、全く、正反対の表情を表す慎也の顔が・・その苦しさを物語っていた。

■ Copyright © 2017.2 慢性ショック・相談室 youalive.com all rights reserved ■