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★はじめに(11)(12)(13)14.甦る死への恐怖 (15)

14.甦る死への恐怖(心の扉が開いた時)

過去の出来事と現在の出来事は、『今』刻まれている時間を・・共有する。
          この厳しい現実は、自分と自分の心との戦いとなる。

心の不良は体の不調

目に見えない心の病は、目に見える体の病を引き起こす。
       そして、目に見える体の病は、目に見えない心へ負担をかける。

未奈と悠希の体調不良は4年目を迎えた。
昨年、インフルエンザを患い、気力・体力・思考力までも奪われたまま・・時を刻み、
気怠さがこびりつき免疫力も奪われた2人は、今年も仲良くインフルエンザを患った。

「もういいよ、充分頑張った、このまま寝ていればいい、もう、起きなくていい、
このままでいい、楽になるよ。」と、常に、悪魔の囁きが聞こえて・・く・る。

そんな2人が床を離れるまでに、昨年はたっぷり1週間かかったが、今年はこの気怠さに後押しされて、悠希は2日、未奈は1日で床を離れた。 まるで、慢性的な体調不良がメリットに転換させた・・ように思えた。

でも、床を離れた2人の体調が良くなった訳ではない、慢性的な気怠さにインフルエンザが運んできた微熱がプラスされた贈り物は、 いつも悩まされ続けてきたイライラ気分を消し、フワフワとした心地よい時空間へ、すると、ゆったりとした時を刻み始めた。

未奈は通常の家事仕事をこなし、日中は悠希と2人でコタツ生活を始めた。

『死』の記憶

未奈は自分の体調と悠希の体調を見つめながら時を刻んでいた。
そのとき悠希の目から大粒の涙がこぼれ落ちた・・未奈の手は悠希のおでこへ・・

「苦しいの?  まだ、辛いの?」
「大丈夫。」と、首を振り涙を拭いた悠希。
「どうしたの?」と、囁く未奈。
「チャッピーね、偽善さんが来ると『ウー』って、うなるんだ。」

2人の会話テンポは、体調不良を語るように、ゆっくり、ゆっくりと言葉を発する。
口火を切った悠希の声は明るい、でも、過去を思い起こしたのか・・いきなり下を向いた、 そんな悠希の表情は、歯を食いしばり、涙を堪えていた。

すると未奈の口が動く、

「そうかぁ、そう言えばね、ママはチャッピーに怒られた事がないな~ぁ。
でもね、ママはチャッピーに叱られる、と思っていたんだ。だからね、側へ行くのが怖かったんだぁ。 でもね、チャッピーはママを見てしっぽを振ってくれたの、嬉しかったな~ぁ。
そのお礼にチャッピーの頭を撫でたんだ」と、チャッピーを思い出しホンワカする未奈。

1つの想い出が語られると、話をしている人も、聞いている人も、その話の中に潜む言葉から・・何かを・・思い出す。まるで、連想ゲームをするように・・想い出が・・甦る。

「チャッピーはね、優しいよ(にこにこ)
あのね、偽善さんとチャッピーと悠ちゃん、3人で、川へ遊びに行ったんだ、
その時、悠ちゃん、滑っちゃって、川へ落っこちゃったんだ。
その時、ビックリして『助けてー、助けてー、』って、叫んだんだ。
でも、偽善さんは・・、助けてくれなかった。ただ、笑って見ていた。
悠ちゃんは、何度も、何度も、叫んだのに・・・」

徐々に声が消えていくと、下を向いた悠希は、堪えきれない・・涙を落とす。
一方、未奈は、悠希の話に呑み込まれて・・口を閉ざす。

言葉を使えば、出来事を呼び覚ます。(だから・・思い出したくない。)
言葉を使えば、当時の恐怖も甦る。 (だから・・話をしたくない。)

未奈は『助けずに、笑って見ていた』の言葉に、リンクされた記憶を甦らせていた。
当時、未奈が食事の支度をしている時に焦げ臭いにおいに誘われて、後ろを振り返った、
すると『自分の首から立ち上る炎』と『その様子を見ている偽善の不気味な笑顔』を・・

「でもね、チャッピーが助けてくれたの♪」と、

悠希は、自らの意識を切り替えて、笑みと明るい声を飛ばす、
そんな悠希に引っ張られた未奈も笑みを返した。

「そうか、よかったね。チャッピーに感謝だね。チャッピーは偉い♪ えらいね~ぇ」
「うん。悠ちゃんの処まで泳いできて、悠ちゃんがチャッピーに触ったら沈んじゃって、 チャッピーは、びっくりして、悠ちゃんから少し離れて泳いでいた。(にこ)
その時ね、チャッピーが、『こうやって泳ぐんだよ』って、言っているみたいだった。
だからね、悠ちゃんはチャッピーの真似をして、一生懸命に、手を動かしたんだ。
そしたらね、泳げたよ♪」

話すテンポは、ゆっくりに、でも、声は弾む、
顔には笑み・・、手は、当時を再現するように、動く、

「良かったね~ぇ、じゃあ、悠希も犬かきが得意だね。ワンワン♪」と、茶化す未奈。
「うん、」と、明るく返事を返す悠希。

その後も、チャッピーとのエピソード話が続く・・チャッピーの思い出に支えられる悠希。
語りたいと思う気持ちは、辛く苦しい話があるように、楽しい嬉しい話もある。

赤ちゃん繋がり・・

「チャッピーの赤ちゃんが生まれたの。
白いのと、黒いのと、チャッピーと同じ色の赤ちゃんが、全部で4匹、生まれたの。
みんな、ちっちゃくて可愛かったよ。でもね、みんな・・、死んじゃった」

未奈の頭の中は真っ白、言葉が・・・、
口を閉じた悠希は、下を向く、が・・持ち上げると、

「お母さんのところでね、子猫が生まれたの。それでね、貰ったんだ。
そしたらね、偽善さんが、台所で首を絞めていた。だからね、
悠ちゃんが偽善さんから取り上げて、悠ちゃんの布団で一緒に寝たんだ。
こんなに、小さくて、可愛かったよ。(ジェスチャー混じりで微笑む)
でも、朝起きたら、コタツのテーブルの上で、死んでいた。」

口を閉ざす悠希は、まるで自分の責任だ、と、語るように・・下を向く、
暫くすると「あれは偽善さんが殺したんだ」と、呟くように声を発して下を向く・・

暫くすると、・・涙を堪えた顔を持ち上げて、
「でもね、お母さんに見つかって、偽善さんが怒られていたよ。(静かに頷く未奈)
そしてね、『もう1回あげるから、今度は、殺したらダメだよ』って、言われて、
貰ってきたけれど・・、次の日の朝、コタツの側で・・死んでいた。」

繰り返し子猫の命が奪われた、この出来事を間近で見つめていた、悠希は・・

悠希の話を聞いていた未奈は『子猫の死』という言葉から記憶を掘り起こした。
猫を鷲掴みし「死ね」と、壁へ叩き付ける偽善の表情と行動が・・・未奈を襲う。

放心状態の未奈・・、それでも悠希の視線を感じると・・、
「赤ちゃん…、可哀想だね。 赤ちゃん…、可愛いのにね。」と、
やっと声を出した未奈だったが、自分の言葉に落ち込み、視線を落とした・・、

「うん、可愛かった。(悠希の優しい声と笑みが流れる)
悠ちゃんの手の上にのるんだ。毛も柔らかくて気持ちいいんだ。」と、

目を閉じて笑みをこぼす、フワフワした空気が悠希を包み込む、
そんな悠希の手の中には、まるで当時の子猫がいるように顔や手をスリスリ・・動かす、

突然、目を開けた悠希は、未奈のお腹に飛び込んだ。
「ママのお腹の中に戻りたい」と、逃げ惑うように叫び、泣き崩れた。

僅か3歳の悠希が視ていたのは『子猫の命を奪った』父親の姿。
この映像は、悠希に『次は、お前だ』と、無言の脅迫と恐怖を植え付けた。

大人の行動が、子供に恐怖を与える出来事

頭を持ち上げた悠希、
「『ママと暮らしたい』って言ったら偽善さんが怒鳴った。『お前までも俺を捨てるのか』って殴った。 ものすごーく怖かった、恐かった。(頭を潜らせて泣く)

ママに電話をした時、台所に居た偽善さんは悠ちゃんに向かって何かを投げつけた
悠ちゃんが振り返ったから、ぶつからなかったけど、悠ちゃんの目の前を何かが通り過ぎた。 あの時、振り返っていなかったら・・ぶつかっていた。ものすごーく怖かった。
本当に恐かったの。(頭を潜らせて泣く)

コタツで絵を描いていた時も、突然、後ろから何かが飛んできたの。 悠ちゃんは何もしていないのに…、飛んできたの。この時も、悠ちゃんが動いたから、ぶつからなかったけど、
もしも、動かなかったら、ぶつかっていた。ものすごーく怖かった、本当に恐かったぁ」

ボロボロと涙をこぼしながら、一気に話をする悠希、
未奈の腕の中に蹲り、大声を張り上げて、泣き続ける悠希。

突然、顔を持ち上げた悠希、その視線が未奈に注がれると、
「お母さんにも『ママと暮らしたい』って言ったんだ。
そしたらね『あっちは怖い処だから、ここで暮らした方がいいよ』って言われた。
だからね、もう、ママと暮らすことを諦めた。」

未奈のお腹に飛び込んで、泣き続ける悠希・・・

止まらない涙

『話してはいけない』と、心の中に封印していた出来事を・・しゃべり続けた悠希。
出来事を語る事によって、その当時に味わった恐怖も甦り・・大声で泣きじゃくる。

川で溺れた悠希を救ったのは・・チャッピー(犬)、そして命の尊さを学ぶ。
小さくて可愛い子猫を抱いて命を守ったはずなのに・・・守れきれなかった悠希。
子猫の死を見つめて、“自分を責める”、“死への恐怖” を噛みしめて『次は、私?』・・と

“怒鳴る”、“殴る”、“物を投げつける”、父親が子供の悠希を狙う。
悠希は、それらの出来事とその当時に味わった、恐怖・・全てを思い出す。

家庭という箱の中で、逃げ場のない家庭の中で、自分の命の危険を察知しても・・・、
弱者である子供(悠希)は、強者の父親(偽善)の暴力を・・誰にも話していない。

と、いうよりも、僅か3・4歳の子供(悠希)は、父親から怒られる行為を “暴力だ” と理解できない。 子供は『自分が悪い子だから怒られた』と理解する。だから『何もしていないのに・・』と、怒られた理由を探す、が、見つけられずに恐怖だけを大きくした。

また、この恐怖から逃れるには『ママと暮らす事』と、思いを秘めて、
たった1人の見方だと信じる人(お母さん)に話をしたが・・、叶わないことを悟った。

信じる人がいない。助けてくれる人がいない。孤独と絶望に見舞われた・・2年間・・、
悠希は、たった1人で・・・戦ってきた・・・この恐怖は・・計り知れない・・

封印されていた出来事(過去)が、解き放された時、
これで終わった・・・ではなく、むしろ、始まりを意味する。

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