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15.DVはこれだ(ドメスティック・バイオレンス)

家族から受ける暴力は・・止まらない・・逃げる事も出来ない・・だから、 子猫の死の恐怖、怒鳴られた恐怖、殴られた恐怖、突然、物が飛んでくる恐怖、全てを心が受け取る。

受け取った恐怖

悠希の話を聞いていた未奈は、まるで自分の身に起きた出来事のように・・心が怯えた。
また、未奈自身に起きた出来事も甦り、2人が抱える過去の恐怖と孤独に心を凍らせた。

未奈は、2人(悠希と未奈自身)が、過去に抱えた恐怖と孤独を、今は1人で抱え込んだ。
すると、心を麻痺させてしまったのだろうか・・妙な感覚のまま・・時が流れた。

平常心を装う未奈は、悠希が眠りについた事、慎也が仕事から戻った事、食事を出し話をしていた事、 それら全てを無意識にこなし・・・未奈は何も記憶していなかった。

そんな未奈の意識が戻ったのは、突然、聞こえてきた慎也の怒鳴り声・・

「そんな事あり得ない! 嘘だよ! 悠希ちゃんが何か勘違いをしているんだよ。
そんな事をする訳がないだろう!」と、怒りを爆発。

慎也の目の前に座る未奈は、『えっ、何を、怒っているの・・?』と、疑問を抱えながら慎也を見つめて心の中で問う、 一方で、未奈自身の意識へ・・意識を注ぐ・・

「私、何か、話していた?」と、おどおどと声を出す
「あぁ、偽善さんが子猫を殺したって、言っていた」と、怒りまくる。

そんな慎也が言い放した言葉は、“未奈の人生” と “悠希の人生” を否定した。

「嘘なんかじゃない! 悠希は事実を言っている。私は悠希を信じているし、偽善さんならば、 やりかねない。やると思う。」と、大声で吠えた未奈は慎也を睨んだ。

「いい加減にしろよ! やる訳がないだろう。父親なんだから!」と、
怒鳴った慎也の声は『黙れ!子供よりも大人を信じる』と、叫んでいた。

「慎也には解らないのよ。今までに、そういう人に出会った事なんか無いからね。 幸せな人生を歩んで来たんだもんね。解るわけがないわよね。」と、大声でイヤミる未奈は、 『なぜ、否定する、何も知らないくせに・・』と、感情を爆発させていた。

「ああ、解らないね、そうだよ、俺は、そんな奴らに出会った事がないからな。
幸せだからな。」と、開き直りの怒鳴り声を飛ばす慎也。

暴力

慎也のその声に、その言葉に、冷静になった未奈は、一拍おくと、静かに口を開いた。

「横浜で一緒に暮らしている時に、同じような場面があった。
偽善さんは犬を飼いたがっていたけど、私は、お金がない、借りているこの部屋はペット禁止。 それに、悠希を育てるのに手一杯だから、私には世話は出来ない。だから飼わない、絶対に買ってこないで、と、普段から何度も、パートへ行く前にも、何度も釘を刺してきた。

ところが、私がパートから戻ってきたら、部屋の中に子猫がいた。
偽善さんは『安かったからカードで買ってきた、6万円』って、笑いながら言った。

そんな偽善さんに対して、ムカついた私は、あんなに何度も言ったのにって、買ってきた事を責めて『面倒を見ない』と、言い放した。 そしたら、いきなり子猫を鷲掴みにして『死んじまえ!』って、叫びながら足元へ叩き付けたり、壁へ向かって投げつけたり、私が『止めて』って、叫んでも・・・繰り返した。

この時の私は、そんな偽善さんと子猫の姿を、悠希に見せたくなくて抱きかかえて目と耳をふさいだ。 偽善さんには「止めて」って、叫んだ、でも、止めてくれなくて・・、
悠希を座らせたその時に『死ね!』と、叫びながらコンクリート張りの洗面所に向かって投げた、、そして、パチンコへ行った。

偽善さんが家を出た後で、子猫を抱き上げたら元気だった・・マジで、ホッとした。

偽善さんとの生活は、命を張る場面が、何度もあった。
「止めて」って、言えば続き、開き直って「殺せ」という態度を示すと止めた。

当時の偽善さんが暴力を振るう相手は、私だけだった。
何度も頼んだ『暴力を振るう事を止めて欲しい』と、でも、止めなかった。

偽善さんの暴力は、何が切っ掛けで始まるのか、予測が難しい。
でも、怒らせた後で振り返ると、逆らったことが原因かな、と解る。

子猫の件も・・そうだけど、“怒る” と、突然、手当たり次第に物を掴んで投げつける。
私がお風呂に入っている時、突然、ドアが開いて、沢山の食器を投げ込まれた。
この時は、私が食器の破片で怪我をして、血を出したことで、偽善さんは止めた。

椅子を投げた時は襖に突き刺さった。鍋を投げた時は部屋の中はカレー・・。
何に対して怒っているのか解らない。解るのは「止めて」の言葉でもっと怒る事だった。
偽善さんの暴力は、腕力だけじゃない、言葉の暴力も酷かった。

それでも、一緒にいられたのは、良太に止められたから・・
『悠希が可哀想だから、もう少し我慢しろ・・』と。

良太も偽善さんの事を怖がっていた。それでも、悠希の事だけは可愛がっていたから、」と、未奈が口を閉じたが、慎也の声は聞こえてこなかった。

心の傷を語れない理由

しばらくの間、時を刻む音だけが・・・流れていた。
未奈と視線を合わせない慎也へ・・視線を送る未奈の口が開く、

「慎也に解って貰いたい事は・・、偽善さんの気持ちじゃない、偽善さんの暴力じゃない。
そんな事、どうでもいい、解ってくれなくていい、理解できなくていい、
そんな事はどうでもいいの、そんな事を望んでもいない。

そうじゃなくてね、

悠希は、今も、ひとりで苦しんでいる事に、寄り添って欲しいの。
過去の思い出が、現在の悠希を苦しめている事を、信じて欲しいの。
その記憶は、楽しかった思い出を呑み込むほどの・・“恐怖”・・なんだ・・と。

悠希は、今も、その恐怖と戦っている、苦しんでいる、
自分では、どうすることも出来ない、記憶に・・怯えている、
悠希が可哀想と同情するのではなく、目に見えない気持ちを理解するのでもなく、

ひとりぼっちでも、一生懸命に生きてきた悠希を、ほめて欲しい認めて欲しいの

悠希は嘘を付いていない、信じて欲しい、偽善さんじゃなくて悠希を視て欲しい、
悠希の気持ちに、ただ、寄り添って欲しい・・だけ、だから。」

未奈は口を閉じた、慎也の声は聞こえてこない・・・、

追記

理解をしてもらいたい人に伝わらない、苦しさ、心の傷に寄り添ってもらえない、悲しさ、を始めて知った未奈は、心の傷を語ることによって、より一層、心が傷つくことも知った。 すると、この時を境に、未奈は慎也に話す内容を無意識に振り分けるようになった。

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