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★はじめに(3)(4)(5)6)隠す(自分に嘘を付く事・おねしょ) (7)

6.隠す=自分に嘘を付く(おねしょ)

子供の愛らしい姿は親の五感を和ませる。ちっちゃな紅葉の手、覚え立ての言葉(片言)、
太陽を超える笑み、時には、自分を主張するように豪雨の涙も・・・全てが我が子。

かくれんぼの天才

次の日の朝、未奈が目を覚ますと、隣に寝ているはずの悠希の姿が・・見あたらない。

この部屋は2部屋を仕切る襖を外しワンルーム使用をしていた。こんなに見通しの良い部屋で・・「悠希、どこにいるの?」と、名前を呼びながら歩き回る未奈・・全く悠希の声が聞こえてこない・・不安を大きく・・玄関へ「ある」と悠希の靴を確認した。
「よっし、今一度・・」の思いで、押し入れの中、タンスの中、カーテンの中・・とにかく隅々に目を配る、すると、タンスの横で重なり合うカーテンが、まるで悠希を消すように包み込んでいた。

その姿を目にした未奈は、思わず『かくれんぼの天才』と、言葉が浮かんだ。

小さく丸まった悠希を見つけて、 “ホッ” とする未奈の頬が緩む、
「なん~だ、こんな処にいたんだ、心配したよ、どうしたの?」と、ゆっくりと声を掛けながら、しゃがみ込んだ未奈、手を伸ばして悠希に触れると・・手が止まった。その手は違和感と冷たさで一杯だったが、笑みを広げた未奈はそのまま抱き上げた。

「そおぅか、おねしょ、しちゃったんだ、着替えようね。」と、明るい声を飛ばしながら足を動かす未奈。そんな未奈の腕の中にいる悠希は、頭を潜らせたままビクともしない、まるで、硬い石のように重く、固く、小さく丸まっていた。

脱衣所に着いた未奈が腕の中から悠希を下ろすと、
「着替えようね、濡れたパジャマを着ていると、風邪、引いちゃうよ。」と、悠希を見つめて声を掛けながらパジャマを脱がせ始めると、やっと、悠希の顔が持ち上がった。

『おねしょ』は、子供が発するSOS。

心が怯える恐怖

その顔は、とても不思議そうな表情をしていた、そして、
「怒らないの?」と、今にも消えそうな、か細い声を流す悠希。
「怒らないよ。いいんだよ、おねしょをしても、ねっ。」と、明るく飛ばす未奈。

「偽善さんは怒ったよ。悠ちゃんは叩かれた。ものすごーーく、恐かった。」と、
当時の思いを響かせる声と表情は、今にも泣きそう・・、悠希の心は怯えていた。

「そうか、叩かれちゃったんだ、酷いね、痛かったね。」と、声を掛ける未奈の手は動き続ける、「おねしょは、ね、子供だから出来るのにね~ぇ、」と『ごく当たり前の事だよ』と、伝えると、「おねしょの処理ならば、任せて、良太なんか小学生になってもしていたよ、(笑)。ねっ、心配をしないで、きっと、いつの日か直るから、ねっ。
その時まで、おねしょをしてもいいんだよ。」と、ゆっくり声を掛ける未奈。

すると、はじめて悠希の顔にも笑みが見えた。

「それでね、ママと約束をして欲しいの。おねしょをした時は、必ず教えて欲しいの。
ママは、絶対に怒らないし、叩かないから、ねっ。悠希が濡れたパジャマをいつまでも着ていると、風邪を引いちゃうよ。お腹も冷えて痛くなっちゃうよ。
だからね、おねしょをした時には、必ず、教えて欲しいの、ねっ。直ぐに着替えようね。」

未奈を見つめ続ける悠希は、“笑みを含めた表情で軽く頷く”、悠希の反応が薄い。

当時の悠希がおねしょをした後に起こす行動パターンには、①部屋の隅で小さくなって隠れる。②いつも起きる時間までベッドの中で寝ているふりを続ける。③おねしょをした後に着替えると何事も無かったかのように日常生活を送る。この3パターンがあった。

恐怖を抱える心は、“隠す”

その後も、悠希は『おねしょをした事を報告できない』未奈はどうしても悠希の口から報告をもらいたかった。そんなときに、久しぶりに慎也を交えた3人の夕食が始まった。

でも・・食事・・という場で・・と、迷いが過ぎったが、

「慎也はいつまで、おねしょをしていた? 良太は小学校へ入ってもしていたよ。」
「俺か? そう言えば、俺も小学校の時までしていたなぁ。」と、
いつもと変わらない慎也の様子に、未奈はホッとすると調子に乗って話を弾ませる、

「その頃になると、でっかい、地図がかけるよね~ぇ、」
「かける、かける。世界地図なんてもんじゃないよなぁ~。
その頃になると、途中で気づくけど、布団の中でするのも気持ちいいんだよ~ぉ~」と、
慎也と未奈はおねしょの話で、盛り上がり、笑い合っていたが、
悠希の顔には、不思議マークがたくさん張り付いていた、

そんな悠希に視線を合わせた未奈は、
「ねっ。悠希もいいんだよ、良太も、慎也も、おねしょをしていたでしょ、もちろん、ママもね、だから、悠希もおねしょをしても、いいんだよ、ねっ。」と、明るく声をかける未奈は『おねしょをしたら、怒られる、叩かれる』この記憶を塗り替えたかった。

「おねしょは、子供のうちだけだからなっ、大人になってしたら恥ずかしいぞ。
今のうちに、いっぱいしておけ。なっ。」と、慎也も明るく声を弾ませる。
「そうだよ、おねしょは、子供の特権だもん。子供だからこそ出来るんだもんね、ねっ。」「うん、」と、はじめて笑顔で頷いた悠希。

「それでね、おねしょをした時のお約束があります。
必ず、ママに教えて欲しいの、悠希が次の日も気持ちよく眠れるように、ママがお布団を乾かしてあげるから、お布団だって濡れたままじゃ可哀想だよ。
『乾かしてくれ~、濡れたままじゃ、悠ちゃんが可哀想だ~ぁ』なんて、お布団も言っているかもよ。(悠希が笑う) だからね、教えてね、約束したよ。」と、
未奈は願いを込める、悠希の頭はゆっくり頷き、にこっと笑みも飛ばした。

その後、2度のおねしょは・・秘密。でも、3度目の時に変化が起きた、小さな悠希が大きなシーツを引っ張って、台所にいる未奈のところまでやってきた。
「ママ、おねしょをしちゃった。だから持ってきた。」と、ニコニコ。
「はい、偉いね。教えてくれてありがとうね。」と、
悠希の明るい声に、顔に、未奈は微笑みながら悠希の頭を撫でた。

自分に嘘をつくよりも『自分に正直に生きろ』と、未奈は伝えたかった。

追記

隠すという行為は『怒られた・叩かれた・怖い』などの恐怖と不安から生まれる。
そして、その恐怖から『逃れたい・回避したい』の思いは『隠す』という行動にでる。

恐怖を学んだ心は、自分を護るために『隠す』事を学ぶ。
ところが、隠す行為は『自分に嘘を付く事』になる。

未奈は『おねしょをする行為』よりも『隠す行為』を直したかった。

やっと悠希から報告をもらった未奈は、心の底からホッとしていたが・・、
悠希が抱える “恐怖の大きさ” を考えずにはいられなかった。

子供のお漏らしやおねしょは、精神的なものが大きい。また、未奈と離れる前の悠希は、おトイレは出来ていた。つまり、お漏らしやおねしょは全くなかった。 そんな悠希が、お漏らしやおねしょを始めたのは、心に大きな恐怖と不安を抱えている証拠だった。

でもね、子供の気持ちが落ち着けば、必ず、直ります。
また、お漏らしやおねしょは子供が発するSOS “何か不安な事” を抱えています。
親や大人は、怒らず、怒鳴らず、子供を信じてゆっくり見守って欲しいです。

【蛇足】未奈は6歳の時に里親の元へ、その当時、お漏らしやおねしょを繰り返していた。

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