相談室・慢性ショック・心の傷・トラウマ・分析・気になるNews・心のケア・実話・家庭内暴力・児童虐待・虐待・離婚・再婚・親と子・子育て

★はじめに(10)(11)(12)13.心の闇(リンゴ箱の絵) (14)

13.心の闇(リンゴ箱いっぱいの絵)

子供(赤ちゃん)は、親・家族・大人たちの手によって護られ、信頼の絆ができる。
そのお礼に、子供(赤ちゃん)は、屈託のない笑顔を振りまいて、希望を輝かせる。

甘える事が出来ない

悠希は赤ちゃんの頃から子供らしい笑顔を捨て、人(親)に、“甘えない”、“頼らない”、の精神を持ち『親など信じていない』と、訴えるように、未奈が「むぎゅ~」しようものなら、即、拒んだ。 そんな悠希が1日に1度だけ、母親の未奈に抱っこを要求する時がある。

それは『夜泣き』という形で表れた。

悠希の夜泣きは、病院から自宅へ戻ったその晩から始まり、毎日、続いた。 そんな悠希をあやす未奈は寝不足と疲れでクタクタ「泣きたいのはママだよ」と、悠希を見つめてぼやきが出るほどに・・・、その時、 腕の中で寝息を立てる悠希は・・“ホッ”・・と、そんな穏やかな表情は、正に、赤ちゃんらしいあどけない可愛らしい顔になっていた。

そんな悠希にとっての、夜泣きとは『たった1つの甘え方』のように思えた未奈は、この時から夜泣きが始まると「甘えて良いよ、ずーと抱っこしているから」と、声を掛けていた。

日々の時間と共に成長する悠希は、絵を描く事に興味を示し、画用紙とクレヨンが大好きになった。 そして1歳を迎えると、まるで、夜泣きが絵に移行しているような時を刻み、絵を描く頻度が増えていく・・、2歳を過ぎると以前のような激しい夜泣きが消えた。

甘え下手な悠希が身につけた『夜泣き』は、唯一の甘え方
そして、甘え方を学べなかった悠希が学んだのは『』を描くことだった。

悠希にとって、夜泣きは、心と身体のバランスをとるために重要な役割をしていた。
そんな悠希が描く絵は、言葉では伝えきれない・・自分の思いが標された。

気遣いは本音を消す

2年ぶりに未奈と暮らす悠希は、得意の絵を描くと、“ニコニコ”、しながら未奈に見せた・・これで3枚目になる。 この3枚の絵を見つめる未奈は『やっぱり、悠希らしくない絵』だと、また視れば視るほど、未奈が悠希を虐待しているような絵に・・見えてきた。

「悠希は、ほんとうに絵が上手だねぇ。」と、笑みを飛ばす未奈は悠希の頭を撫でていた。
「でも、悠希は小さいね~ぇ、ほら、こんなに小さいよ、どうして、こんなに小さいの?」
「うん、小さいの」と、笑みを広げる悠希は小さく描く事が当然のように・・言う。

悠希が描いた絵・・言葉・・様子・・全てに未奈は疑問を持つ・・が、いつものように、

「そうなの、残念だな~ぁ。悠希は、こんなに大きくなったのに、この絵を見ていると、
悠希が小さすぎて、赤ちゃんみたいだね。でも、ママはこんなに大きいよ。まるで、怪獣みたいだぁ」と、未奈が声を弾ませると、ケタケタと笑った悠希。

「悠希は、こんなに大きくなったんだから、(悠希の頭を撫でながら・・)
絵の中の悠希も大きく描いて欲しいな~ぁ」と、未奈は悠希を見つめた。

顔いっぱいに広がった悠希の笑顔が、“分かった”、と応えてい・・た。
その後は、“見せるための絵”、から、“見せることが出来ない絵”へ、と・・なり・・。

目に見えない心の絵

そんなある日、小学校から戻ってきた悠希は、口を閉ざしたまま画用紙と色鉛筆を手にするとキッチンテーブルに座った。 集中力をマックスにし黒色鉛筆を握り締めると、溜め込んだ思いを吐き出すかのように、何枚も、何枚も・・ひたすら描き殴る・・。

その迫力に魅せられた未奈は、
妙に、気になり、そぉーと、そぉーと、覗き込んだ・・その時、

「見ちゃダメ」と、いきなり絵を隠す悠希は、笑みを広げて未奈を見た。
「すみませんでした、では、見ません」と、笑みを返す未奈は、悠希の側を離れた。

この頃から悠希が描く絵は、色鉛筆を広げても黒色のみになり、短くなった黒色鉛筆を見つめて・・鉛筆に持ち替えた・・が・・、芯が折れる事によって手を止める、この流れを避けるためにボールペンに持ち替えた。

そんな悠希には、絵を描きたくなるタイミングがあった。

学校から戻った直後、遊びから戻った直後、朝起きた直後に、誰をも寄せ付けないバリアを張り巡らせ、 目に見えない記憶にある出来事を、目に見える画用紙の上に標す

そんな絵は、美術的要素から描くのではなく、日記でも付けるかのように、ペン、を、走らせる。 描き殴る絵、抹消したい出来事、もう二度と思い出したくない・・記憶を吐き出す。

ひたすら描き続ける・・この流れは、悠希の気が済むまで・・続く・・
そして、突然、何の前触れもなく立ち上がると、悠希だけがその場から離れる。

その後は、いつもの悠希に戻る。

悠希が抱える、悲しみ、苦しみ、そして、味わった悲痛さ、は、誰にも語れなかった。
そんな悠希の気持ちを理解したのは、“もう1人の悠希(雪ちゃん)”だけ・・だった。
でも、その雪ちゃんを消したのも、悠希。その後の悠希は、“絵” を描き続ける。

語ることが出来ない思いを描くこの流れは、悠希にとっては大切な作業だった。

その当時の悠希は、時と場所を選ばず、突然、“描きたい衝動” に駆られた。
そのときに、もしも、紙とペンが無ければ、パニックを起こし大騒ぎして涙した。

あのスピードは何?

そんなある日、学校へ行く悠希を見送ると、残された絵はコタツを囲んでいた。
その枚数の多さに驚いた未奈が座り込むと、1枚、1枚、拾い集めながら目を通していた。

すると「描き忘れた?」と、呟く未奈は笑みをこぼし、
「あのスピードならば、仕方ないかぁ」なん~て、のんきな事を思っていた。

そんな未奈が見つめているのは、猛スピードで何枚も何枚も描き上げる、悠希の姿、と、
手・足・目・口など人の身体にある部品が描かれていない・・人物・・の絵だった。

この時の未奈は、後に描かれた絵を見て・・衝撃を受けた。

心の傷を描きためた

心の傷を語ることは難しい、その流れをこの絵が物語ったているようだった。

その後も悠希が描く絵は、観るからに未完成の絵が続く、また、この当時に描く絵の枚数は、百枚の画用紙、両面に描いても約1週間でなくなるほどの、ハイスピードだった。

がむしゃらに描きまくる絵は、記憶を描く絵、そしてその人物は悠希自身・・だった。
自分の心と向き合う悠希の絵は小2まで続き、リンゴ箱1つに入りきれない枚数になった。

辛く、悲痛な出来事は、思い出す事も・・苦しく耐えがたい記憶。
それでも、人生は切り刻むことなど出来ない、過去を切り捨てることは・・出来ない。

■ Copyright © 2017.2 慢性ショック・相談室 youalive.com all rights reserved ■