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★はじめに(1)(2)(3)4)話し合いを振り返って (5)

4.当時の“場面”を振り返る

親を見つめる子供は、親から学ぶ。 子供を見つめる親は・・何を学ぶのだろうか?

今日もいつものように夕食が終わり悠希が眠りに就くと、慎也と未奈の討論(?)が始まる。
そんなときは、片手にビール缶、つまみは2人の視線の先で眠る悠希だった。

視線は・・大人?子供?

「難しいよな、男が1人で子供を育てるのは・・、俺には出来ない。」と、突然、独り言のようにボソッと声を漏らした慎也、そんな慎也の声は静けさに穴を開けた。

「1人で、育てていないじゃない。」と、慎也の言葉に苛立つ未奈がボソッと。
「ああ・・、そうじゃなくて、子供を引き取った事だよ。」
「引き取るだけなら、誰でも出来るよ、問題は、引き取った事への責任だと思うなぁ。
だから、慎也は、“出来ない”・・ と、思うんでしょ。」
「偽善さんは責任を持って、引き取ったんだよ。」と、

あくまでも偽善だけを見つめて、正当化し敬意を示す・・慎也。

「話し合いをした時の事、覚えている?」と、声を掛けながらビールを手渡す未奈、
「サンキュー、『親戚一同で面倒を見る』って、言っていたな~ぁ。」と、明るく応える。
「う~ん、じゃなくて、1番始めに使った言葉だよ、『なぜ、離婚をしたのか?』から始まると『弟が可哀想でしょ』って、私への怒りを飛ばした。
マッ、当然と言えば当然なのかも・・知れないけど・・、可哀想なのは悠希ではなくて偽善さん、だから『親戚一同で面倒を見る』と、言い切ったんじゃないかな。」

「家族なんだから、当たり前だろう。」と、ちょっと怒り声の慎也。
「でもさ、普通さ、子供を引き取る理由は、『その子供が可愛い』とか『可哀想』という理由で、引き取るんじゃないの・・・。」
「そりゃぁ、“可愛い”に、決まっているだろう、孫なんだから。」強気の慎也。

話し合いの内容を・・分析

一拍おいた未奈の口が開いた。

「お姉さんが『弟が可哀想』って、言った時に『悠希は可哀想じゃないんですか?』って、私、聞き直したでしょ、そのとき、お姉さんは吹き出しながら笑って、
『そりゃぁ、寂しいかも知れないけど、私たちもいるし、今が、元気なんだからいいじゃない』って、 言い放したあの言い方は、“そんな事どうでも良いじゃない”、って呆れていた。
思わず、“今が元気なんだから・・”とは、どういう意味ですか・・と、返したかったよ。
でも、我慢したのは、話し合いの後も、悠希はこの場所にいる、と思ったから・・。
今振り返っても、あの言い方は、“悠希なんかどうでもいい” って、いっていたよね。」

「そんなことはないだろう。」慎也はあくまでも大人の味方。

「私が気になったのは、“悠希のことを可哀想とも、可愛いとも思っていないのに”、なぜ、面倒を見る事が出来るのか・・、この点なんだよね・・、お姉さんの言葉を振り返ると、『大切なのは弟(偽善)、だから、弟のために協力する』って、聞こえた。」

「そりゃぁそうだろう、きょうだいなんだから。」
「そうだよね、そうだよね、きょうだいなんだもんね~、」と、嫌みぽく返す未奈。
「だろう」と、嬉しそうに笑みをこぼす慎也。

お返しの笑みをこぼした未奈、

「私ね、話し合いをした時に、はっきり、見えたような気がしたの。
親戚一同が手を差し伸べているのは・・悠希へ・・ではなくて・・偽善さん・・、
偽善さんのためだけに手を貸している・・事がね。
そんな親や親戚の方々に甘える偽善さんは、慎也と同じ考えかも、だから、当然だと・・、
でも・・実は・・、親戚の方々は、とっても迷惑をしていたんじゃないかな・・、
気づいていないのは・・偽善さんだけ。」

家庭内で作り上げる生活リズム

「それは『迷惑』って、言うじゃないと思うな、」と、姿勢を正す慎也。

「う~ん、慎也が考えていることじゃなくてね、
家庭って生活リズムがあるでしょ、しかも、そのリズムは長い時間をかけて、ごく自然な時間の流れの中で、ゆっくりと作られて行くんだよね~ぇ、
例えば、1人で生活をすれば、自分だけの生活リズムをつくる。結婚をすれば、自分の生活リズムと相手の生活リズムがプラスされて、その家庭内で新しい生活リズムが出来る。
そして、子供が生まれると3人の生活リズムを新たに作り、子供の成長と共に、生活リズムも変化していく。 生活リズムってさ、突然変わるのではなく、長い時間をかけて、その家庭にあった生活リズムが作られていく、んだよね。」

「そうだな」当然のように答える慎也。

「悠希の面倒を見ていたのは・・、
話し合いの場にいた、お姉さんではなく、実家に住んでいるお兄さん家族なんだ。
由美姉ちゃんは、お兄さんの長女、今、高校生、自分の時間が欲しい時期じゃない。
それに、お兄さんの奥さんは、家の農業と職場を掛け持ち、家事仕事や地域の用事などもこなしている、 それでも、子供たちに手が掛からなくなり、やっと、ほんの少しかも知れないけど、自分の時間も持てるようになった。それぞれが自分の時間を刻んでいたんだよ、
少なくとも悠希が行くまではね・・・」

「えっ、面倒を見るのがイヤなのか?」疑問符を飛ばす慎也。
「それは、思っていても、絶対に口にはしないょ。そうじゃなくてね、突然、偽善さんが悠希を連れて戻った、この出来事は、偽善さん1人の問題じゃない、という事だよ」
「家族だから、手を貸して当然だろう」正当派の慎也らしい言葉。

「“手を貸す”って、どういうことだと思う?
『長年かけて築いてきた時間配分を崩す』と、言うことだよ、
しかも、自分の家庭問題ではなく、降ってわいてきた偽善さんと悠希の問題で・・、
今まで長い時間を掛けて築き上げてきた時間配分を、突然、作り直さなければならない。
この流れってさ、私への怒りが増すよね、そして、悠希は私の子供で、女の子だもん、
『戻ってこなければいいのに・・』と、怒りがわいても不思議じゃない・・」

「そうかな、怒っていないと思うなぁ、考え過ぎだよ。」さらっと流す慎也。
「そうぉ? 離婚を選んだ私のことをあんなに攻めていたのに、
『弟は、離婚理由がわからないって言っているけど、なんで、そんな勝手なことをするの』
なぁ~んてさ、かなり怒っていた、と思うなぁ~。
あっ、そうか、だから悠希の話じゃなくて、なぜ、離婚した・・だったのかもね。」

「それさ、普通なんじゃない、親だったら、きょうだいだったら、怒るだろう。」

「だよね、だからさ、私への怒りがあるのに、悠希を可愛がることが出来るのかな・・、
気になったのは・・この点だよ、『悠希がいなければ』と、過ぎらせても、不思議じゃない、逆に、面倒見ると言い切る方が、不思議だよ。」

2人の口が閉じられて2人の視線は悠希へ注がれた。

世間の視線は、子供よりも大人(親)へ

「子供は大変だよね・・・、親や大人たちが勝手に決めた道を歩かなければならないんだもん。それなのにさ、子供が抱える、辛さ、苦しさ、悲しさ、寂しさなど、一切、大人たちの目には映らない。大人たちが見ているのは、いつでも、子供を取り巻く大人たちの姿、大人たちの労力だけ、しかも同情までも集まっちゃう。・・なんかさ・・不公平だよね。
苦労しているのは親に振り回されている・・子供なのに、評価されるのは親なんだもん」

未奈の口が閉じられると「・・そうだなぁ・・」と、慎也の声がしんみり響いた。

「子供を取り巻く大人の人数が多ければ、面倒を見る大人の人数が多ければ、子供は寂しくない、なん~て、大人は勝手に決めつけて大人の考えを子供に押しつけて・・酷いよ、ねっ、寂しいと思うのは親じゃなくて子供なのに・・、大人はその事実から目を背ける。
話し合いの場で『今、元気なんだから、それで良いじゃない』って、笑いながら言ったお姉さんの言葉は、やっぱり、ムカつくなぁ~。しっかり他人事なのに、親戚一同で面倒を見るなんて言い切るんだもん。結構、カチンって、きたんだけどなぁ・・。」

未奈の口が閉じられると、暫くの間、沈黙が続いた、

その静けさを破ったのは
「そうです。なんだかんだ言っても、一番、悪いのは、手放した私・・・、
マジで、悠希には本当に申し訳ないと思っている。」と、神妙に付け加えた未奈。
「そうだなぁ。未奈が悪い。」と、笑みをこぼした慎也。

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