相談室・慢性ショック・心の傷・トラウマ・分析・気になるNews・心のケア・実話・家庭内暴力・児童虐待・虐待・離婚・再婚・親と子・子育て

★はじめに(2)(3)(4)5)「恐い」から学んだ事 (6)

5.「恐い」から学んだ事

ちょっと休憩・・朝の家事仕事を終えた未奈は、部屋の中を通り抜ける風に身を任せていた、まるでタンポポの綿毛のように、ゆったりと、ふぁふぁと、風に乗り風を感じていた。

お尻ふりふり♪

「ママ♪」と、ちょっぴり得意げな悠希の声が流れる。
『見て、見て、目を開けて』と、その声に誘われた未奈が目を開くと、
「お尻フリフリ♪ お尻フリフリ♪」と、小さなお尻が左右に揺れてリズムを刻んでいた。
「かわいい♪」と、キャッキャする未奈。

お尻が揺れる、お尻の後を追う・・白い・・長い・・シッポ(?)も、ちょっぴり、ゆったりと揺れる、それらの動きは観ている未奈の目を楽しませ、心地よいリズムを奏でていた。

そんな悠希のお尻を見続けて、ケタケタと笑い続けていた・・未奈が、

「ねっ、お尻と一緒に白い物も揺れているよ、(振り向いた悠希に笑みをこぼす未奈)、
トイレットペーパーがパンツに挟まっている・・・、みたいだょ。」と、
口を閉じた未奈が悠希を見つめていると・・、
下を向いたままの悠希は『うるさいよ、だから、笑わせているのに、』と、心の声を漏らしながらも、「大丈夫」と、ボソッ、と返すと、「お尻フリフリ♪ ~」を繰り返す。
でも、その動きは心地よいリズムを刻めず『メンドクサ』と、心が語る動きに変わった。

「どうしたの? パンツ、濡れちゃった?」
「うん、でも、大丈夫、こうしておけば冷たくないから」と、応えながらお尻も動く。
「悠希、いいんだよ、パンツを履き替えても、ねっ。」と、未奈が声を掛けると、
いきなり振り向いた悠希・・、その頭上には、ありったけの疑問符が飛んでいた。

「いいの? 偽善さんは『洗濯物を増やすな!』って、怒ったよ。」
「うん、いいんだよ。ほら、悠希は、パンツをいっぱい持っているでしょ。
パンツだって、タンスの中に入っているよりも、悠希が履いてくれる方が喜ぶよ、
だからねっ、パンツが濡れちゃった時には、交換してあげてね、ねっ。」と。

「にこっ」と、笑みをこぼした悠希は、タンスに向かって走った。
「どれを履こうかな~」と、まるでパンツと会話するように声を弾ませる。

親から暴力を受けて育った子供は、無意識に親へ気遣いをする。
それは、自分を護る・・ためである。

何を食べていた?

穂乃ちゃんと悠希の食事風景がちらつく『あの時は、何でも食べてくれたのに・・』と、
思い起こす未奈は『今では、食べてくれない・・』と、悠希の食事作りに悩んでいた。

パンツを履き替えた悠希が、未奈の隣にちょこんと座った。

「何が食べたい?、おいしい物を食べたいね♪」と、笑みと声を弾ませる未奈、
「保育園で出た、お弁当、おいしかったよ♪」と、嬉しそうに応える悠希。
「そうか、保育園では、お弁当が出るんだぁ、いいね~ぇ」と、未奈の頬も緩む。
「うん、悠ちゃんは楽しみだったんだ。おいしいんだ~ぁ。」“ペロッ” と舌を出す。

そんな悠希の表情と仕草を見つめていた未奈に・・・疑問が横切る。

「家では何を食べていたの? お腹が空いた時とか・・、どうしていたの?」
「冷蔵庫の中に、かまぼこを見つけたから、『お腹が空いた』って、偽善さんに言ったんだ。そしたら『これでも食っていろ』って、バターを出された。」
「えっ・・、『バターを食べろ』って、言われたの?」
「うん、ソースも食べた事があるよ。」と、笑みを広げる悠希、対照的な顔をする未奈。

未奈の頭の中では、偽善と悠希の生活、悠希の食事風景が・・流れて・・呆然。

「バターも、ソースも、おいしかったよ。」と、声を弾ませて笑みを飛ばす悠希。
まるで、未奈の気持ちを察して、言葉でホローし、笑みで包み込んだ。
そんな悠希の気持ちを察しながらも・・未奈は慌てた。

「悠希、ちょっと待って。
あのね、バターもソースも食べ物だけど、そのまま食べる物じゃないんだ。
おかずにかけたり、お料理を作る時に入れる物で、調味料って言うんだょ。
調味料はね、味が濃いからそのまま食べちゃダメなの。
体を壊しちゃうからね、だから、これからは、食べないでね、ねっ。」と、

悠希が学んだ情報を未奈は慌てて修正していた。
すると、悠希の顔が・・疑問に変わった、

「どうして、かまぼこがあるのに、バターだったんだろう?」と、首を傾げる。
『ごめん、ごめん・・』と、思いを秘める未奈は、
「なぜだろうね、バターよりも、かまぼこの方がおいしいのに、ねっ。」
「うん、悠ちゃん、かまぼこ、スキだもん。」と、“ニコニコ” と未奈へ微笑んだ悠希、

そんな悠希を見つめる未奈は、切なさを広げる。

「保育園では、お弁当が出るんだね。良かったね、おいしそうだね。」と、
今一度、保育園の話に戻した・・未奈だったが・・、
「うん、楽しみなんだ♪
でもね、たまにお弁当を持っていく日があるの。その時は偽善さんに『お弁当を作って』って、言うんだけど、寝たふりをして、起きないんだ。
いつもは早く起きているのに、保育園にお弁当を持っていく日は、寝ている振りをするんだ。どうしてなんだろう?」と、疑問と質問を繰り返す悠希の頭は、再び、傾く。

「それで、悠希はどうするの?」と、
悠希の質問をスルーすると、未奈の疑問がストレートに言葉になった。
「お弁当箱を持って、お母さんのところへ行くの、そして、作ってもらうんだ。」と、応えた悠希は『無駄だね、ママは答えてくれない』と、語るように未奈から離れていった。

「そっか、良かったね、お母さんに作ってもらえて、本当に、良かった。」と、
悠希の背中を追いかける未奈の声は虚しく流れた。

未奈は、偽善が朝早く起きることを知っていた。
また、寝たふりをする偽善も・・未奈には理解できていた。

悠希の話を聞いていた未奈は、自分を責めた『手放したのは、私、悠希ごめんね』と。
また、悠希はこのときを境に、偽善との生活を・・少しずつ、少しずつ、話し始める。

■ Copyright © 2017.2 慢性ショック・相談室 youalive.com all rights reserved ■