相談室・慢性ショック・心の傷・トラウマ・分析・気になるNews・心のケア・実話・家庭内暴力・児童虐待・虐待・離婚・再婚・親と子・子育て

★はじめに(1)(2)3)心の扉が開く時 (4)(5)

3)心の扉が開く時

不安は安心へ

「悠ちゃんは、ママと暮らしたかったよ。」と、囁く声と真っ直ぐな視線が訴える。
「ママも、悠希と暮らしたかったよ。」と、悠希を見つめる未奈は・・微笑む。
すると、
「ママは、誰が、1番、好き?」と、不安を隠すように、真剣な視線、表情で訴える。
「ママは、悠希が、1番、大好き」と、視線を合わせたまま、笑みを送る未奈。

不安を消したい悠希は、同じ質問を繰り返す、未奈も同じ答えを繰り返す。
1日1日と刻まれる時間は “安心” を築き上げる。この流れは “悠希の心の封印を解く”

3人の生活が約1ヶ月

慎也の休日は、3人で車に乗り込むと、公園と買い物へ行く事が、日課になった今日この頃。 そんなある日、キョロキョロと窓の外を見つめ続ける悠希、その視線は・・・。

「パチンコ屋さんがあるよ、入らないの?」と、突然、声を飛ばした悠希。
「パチンコは嫌いだから入らないよ。」と、さらっと言葉を返す慎也。

“えっ”と、驚いた表情で「どうして入らないの? パパ(偽善)は、パチンコ屋さんに入ったよ。悠ちゃんは『行きたくない』って、言っても、無理矢理連れて行かれたよ。」

真剣に訴える悠希は、目に見えない気遣いを、精一杯、慎也に伝えていた。

ところが慎也は「パチンコはしない」と、素っ気なく応えて口を閉じた。 そんな慎也からは、悠希が抱える疑問は消えず声が高鳴る、ヒートアップする悠希の腕が窓を飛び出し「ほら、ここにもある」「あそこにもあるよ、入ってもいいんだよ」と、パチンコ屋さんを指さし回る。 それでも慎也は沈黙を貫く。

2人を見守り続けていた未奈だったが「慎也もママもパチンコはしないの、嫌いなの。だから、もう誘わないで。」と、2人の間を割って入った未奈は『いい加減にして』と訴えた。

悠希の口が閉じられ、諦めるように静かに椅子に座った。

悠希が学んだ父親像

今日もいつもの時を刻む、午後5時を回ると、悠希はお風呂へ未奈は夕食の準備を始めた。 ところが、慎也はいつもの時を刻めず、迷うように未奈の後ろでウロウロ、ウロウロと動き回る。そんな慎也に気づかないふりを決め込み、料理の手を動かし続ける未奈、そのとき、

「悠希ちゃんと2人で出掛けると『パチンコ屋に入ろう』って、いつも誘うんだ。
今日も2人で出掛けたろう、やっぱり誘ってきて、俺は『嫌いだから入らない』って、言ったんだ。でも・・、何で、あんなに誘うのかなぁ・・?」と、憂鬱そうな声を響かせた。

約1ヶ月前に、悠希は初めて慎也に『パチンコ』を誘った。

「もう、かんべんして~ぇ、って、感じだよねぇ」と、茶化す未奈。“ムッ”とする慎也。
そんな慎也に慌てた未奈は、包丁をまな板の上に置くと、慎也と向き合った。

「ほら、父親の偽善さんはパチンコをしていた。子供の悠希はその姿を見続けてきた。
この流れによって、『パチンコをして当たり前』また『父親はパチンコをする』と、悠希はごく自然に学んだ。 ほら “親の背を見て子は育つ” って、いうじゃない。
良いことも、悪いことも、子供は親を見て育つからね。
でも『慎也はしない、なぜ?』と、疑問を持った。ただ、それだけだと思うな~ぁ。」

慎也の口は閉ざされたまま・・、ただ、怒り顔。

「でも、その疑問は、もしかして、“慎也は遠慮しているかも・・” と、悠希は予測して、『パチンコをしてもいいんだよ』と、気を遣ったんじゃないかな~ぁ。」

子供にとって親とは

“ムッ”「なんでだよ! しなくて当たり前だろう」と、動き回る慎也は全身で怒る。

「そうです、慎也が正しい。慎也の親が正しい。でもね、悠希が父親から学んだ事は『パチンコは誰でもする』『父親はパチンコをする』・・なんだよね。
子供は、親を信頼し親から学ぶ。そんな親からの情報は、“全て、正しい”。
そして、この裏付けとなった出来事は、悠希がパチンコ屋さんを出入りしても、パチンコをしていても、誰1人として、偽善さんに、悠希に、注意をしなかった、事だと思う。
親と一緒に居る子供だから、誰もが、見て見ぬふりをしたのかも・・だけど・・、ねっ。」

言葉を切った未奈の視線が、慎也へ流れたが・・、口を閉じたままの慎也。

「私、思うんだよね、悠希は慎也に気を遣っているんじゃないか・・と、もう一つ、 もしかして、慎也を父親として認めたのかも知れないよ。」と、笑みをこぼす未奈の口が閉じた、
「俺だって、何度も断ったよ!」
「もし、もし、私の話を聞いていますか~ぁ~」

返事なし。

「あのね、慎也のモノサシで、悠希を見つめてはダメ。パチンコをする偽善さんの元で育った悠希は、間違った情報を正しい情報だと学んだ。 だから、これから修正すればいい。
それに・・子供にとって身近にいる親(大人)がルールブックみたいなもんだからねぇ。」

怒りVS冷静

「もう、誘うのは止めてくれ! と、言いたいよ。」と、いきなり叫んだ。

『自分の思いが相手に伝わらない、なぜだ、なぜ、伝わらない』と、苛つく慎也は、 目の前の出来事のみに振り回されていた。 怒りの感情に振り回される慎也は、悠希の気持ちを考える余裕もなく、未奈の話を聞く余裕もない。 そんな慎也は、ただ、『しつこく誘う悠希から解放されたい』と、訴えていた。

その声は悲痛さをアピールし、動き回る足は苛立ちを表現して、未奈に助けを求めていた。

「悠希に直接いいな。私から話す事はしたくない。
慎也は、慎也の言葉で言わないと、悠希に何も伝わらないよ。
悠希は悠希が学んだ方法で、一生懸命に、慎也に気を遣っているんだから。
そんな悠希の気持ちに応えるためにも、慎也は悠希ときちんと向き合わなきゃ、
・・・と思う。それが悠希へ示す姿勢だと思うよ。
慎也は悠希に嫌われる事を恐れているのかも知れないけれど、
そんな思いを抱いていたら、本当に嫌われちゃうよ。」

未奈は静かに話をし、口を閉じた。すると、慎也は静かに台所を去っていった。

その後

そして1ヶ月が過ぎると、いつものように悠希はお風呂へ台所には未奈と慎也がいた。
「やっと誘われなくなったよ」と、ちょっぴり笑みをこぼした慎也は未奈に報告をした。

また、同時期に悠希にも変化が表れた。
慎也をパパと呼び、パパと呼んでいた偽善の事は未奈と同じように偽善さんに変わった。
もちろん、未奈も慎也も悠希に呼び名を強制した事は1度もない。

■ Copyright © 2017.2 慢性ショック・相談室 youalive.com all rights reserved ■