( no.38 ) アルコール漬け お酒だけが私の見方? でも、どんなに飲んでも酔うこともできない。お腹もすかない。眠くもな らない。動きたくもない。何もしたくない。何も考えられない。それなのに涙だけは止まること を知らない。我慢しようと思ってもこぼれ落ちる涙。 この現実から逃れたいのに、自分を消したいのに、気が狂いたいのに、望みかなわず…。そ んな毎日を送っていると、考えることはやっぱり 『なぜ、良太が死ななきゃいけないの。』 そ の事ばかり考えて、そして自分を責めていた。でも、何の答えも見つからない。 私はすべてを恨み憎だ。私が生まれてきた事。そして、生きている事。笑顔が絶えない家庭 を望んだ事。幸せを夢見た事。すると、どうしていつも私が取り残されるの? どうしていつも独 りぼっちになってしまうの? その答えは、私がすべて悪い。私が生きているだけで、大切な人 を不幸にしてしまう。私さえ居なければ、みんなが幸せになれるのに。 そう思うと、私を産んだ親までも恨んだ。神様も恨んだ。この世のすべてを恨んだ。空しさが増 し悔しさが増す。その心を癒すためなのか、いいえ、お酒を飲まずには居られなかった。酒と涙 に明け暮れていました。 一番、心苦しかった出来事は彼の親戚からの電話でした。 私を労っているかのように、「私も子供を亡くしたわ、元気を出してね、」と言う…言葉。そのた びに私は、叫んでいた。『貴方とは違うのよ。私の苦しみなんかわからないのに…、』 と、思う 反面、『彼と別れることさえも許されない? それならば、残された道は死。死ぬしかない、』 と いつも思っていた。 そんなことを考えていると愛が私に話しかけてくる。 「ママ死なないでね、愛ちゃん寂しいから」 と何度も繰り返した。「ママは死なないよ。愛の側 にずっと居るよ。」と私が答えても、愛は繰り返していた。 言葉にして言った事はないのに私の心を見透かす、そして、愛自身も苦しくて悲鳴を上げてい たのだと思う。私は愛の気持ちを知っていても、私の心は、良太に占領され身動きがとれませ んでした。そんな愛は何かにつけて 「抱っこ」 の連発でした。 夜になると私は愛と共に布団に潜る。そして、彼が布団に入る。すると、私は起き出す。 良太の写真を見つめると、「どうして死んじゃうの。なにも死ななくたっていいじゃない。良太。 良太戻ってきてよ。良太の笑顔が見たいの。」 などを、しゃべると声を殺して泣き崩れていた。 毎晩、毎晩、繰り返していました。 そんな私の心の穴を埋めてくれるのが、良太の友達の小松君でした。 彼は、毎日私の家に訪れてくれました。彼に会えると “良太が居る” そんな夢を見させてくれ ました。私は小松君に良太の話をしてもらいたくて、いくつかの質問をしました。 その一つに 「あの日、良太はハイテンションで帰ってきたじゃない、何かあったの?」 すると、 「はい、良太の誕生日にデートの約束が出来たんです。」 という。「なるほどね、」 「小学校の 同級生、良太は好きだったらしく、僕が通っている高校にいたんですよ。」と…、 また、「良太、去年別れちゃったけど、1年付き合っていた女の子が居たんですよ。」と言う。 「やっぱりね、紹介しなさいよ。って言ったんだ。そしたら、彼女じゃねぇーよ。とか、私にとられ ちゃうからだめだ、とか、言ってごまかされちゃった。他には何か言っていた?」 と、聞くと、 「俺の親、親っぽくないんだよな。って言っていましたよ。」 「うん、何度か言われていた。」 と いうと、そこには、微笑みをくれる小松君の笑顔がありました。 そして、「愛の面倒をよく見てくれたんだ。おむつ交換から始まって、お風呂まで入れてくれた んだよ。」 と、いうと 「エー、始めて聞きました。愛ちゃんのこと自慢していました。」と、小松君 の頬がほころんだ。その笑顔に、良太の笑顔が重なった。 その時、私はわがままを言った。「ねっ、泊まっていかない?」 すると 「いいですよ。」と言って くれた言葉が嬉しかった。と同時に、心の中では小松君のご両親に頭を下げていました。 また、清美さんも訪ねてきてくれました。良太のアルバムを見せながら、良太の話に花を咲か せてくれました。有希さんも、いつも私に気を遣ってくれた。ここぞと思うときに、必ず現れては 私を助けてくれた。そして、良太の友達も…、人の出入りが四六時中ありました。 そのたびに私の心は紛れていました。 (みなさんに感謝・感謝ですよね。ほんとうに、ありがとうございました。)
( no.39 ) 1ヶ月の時を刻むと そんな時が刻まれていく中で大晦日を迎えました。 そして、良太に会えなくなって、もうじき1ヶ月の時を刻もうとしていました。 彼は良太の死後、仕事を休み続けていました。彼曰く私のために休んだという。どういう意味 なのだろうか…、家にいたわけでもない…、私の変わりをしてくれたわけでもない…、仕事を 休んで収入がなくなっただけなのに、だって毎日パチンコ通いをしていたもん。(???) 私は何もする気が起こらず、食事の支度をするのがやっとの毎日でした。 掃除?、そんなモンしていませんでした。毎日を過ごすのがやっとでしたから、ふと気が付くと、 部屋の汚さに驚いて、明日は新しい年?、また、人の出入りが多かったし、お掃除をしなけれ ば、そんな思いに駆られて大晦日には動かない体にむち打ちながら、彼の目を盗んで涙を拭 きながら、掃除をしていました。が、いつものように、はかどらず必死で掃除をしていました。 彼は、私の背後でテレビを見ながら、「買い物に行こう。」という。 この頃の私は、彼の態度・言葉に対して、すぐに怒りの感情がわき上がってきていた。 よって、この時も抑えてはいたものの怒り口調で、 「行かない。掃除したいの。」 と言った。 すると、「正月の買い物に行こう。」と、再度誘う。「行かない!」と、私は怒鳴った。すると、彼 はふて腐りながらテレビを見ていた。私はずーと、1人で掃除をしていました。 次の日も彼は腐った顔をしていた。その顔を見たくないが為に 「買い物に行こうか。」と、囁くと 機嫌を直した。その表情を見ていてなおさらムカついた。 そんな時に、彼は私の背後に回ると彼の手が私の肩に触れた。その瞬間、私は全身に鳥肌、 寒気が一気に身体中に回った。その体を抱えていると、「俺、立ち直ったよ。お前は?」 と、明 るい笑顔を振りまきながら私を見た。その顔を見てしまった私は怒り沸騰。「私は日が経つに 連れて辛さが増すよ!」と、怒鳴った。と同時に大粒の涙がこぼれ落ちた。 この時期の私は彼の前では恐くて泣けませんでした。 でも、彼の目を盗んで押し寄せてくる涙に埋もれていたのです。彼が居ない部屋。運転をして いる時。愛がそばにいる時。時と場所を選ばず、涙がこぼれ落ちていました。 (涙は枯れることがない、確信しました。)