( no.51 ) ともだちも…彼も… 今の自分を持て余し自分自身に苛立ちを募らせていました。 そんなときに小松君から、「今年中にどうしてもそちらに行きたいのですが、いいですか?」 と、問い合わせの電話が入った。電話の向こうの小松君の声はとても元気な声でした。 「来てくれるの…泊まってくれるの? おいでよ待っているから、」 と、私の声も弾んだ。 良太の一周忌を小松君は気に留めていてくれたのです。 私は、小松君の声を聞く事が出来て、“また、良太に会える” その思いも膨らんだ。この日 は、長野駅での待ち合わせを約束して電話を切りました。 約束当日、小松君兄弟を駅に迎えに行くと、とても懐かしく感じて、まるで待ちに待った恋人 にでも再会したかのように私の心は弾んだ。 そのためなのか、小松君の顔を見ると、私はしゃべり出した。 「良太のお墓をまだ買っていないんだ。」 「大丈夫ですよ。それは本人が決めることだから 気にしなくともいいんですよ。」と、いう。そして「愛ちゃんはどうしていますか?」と、質問され た。「駄目なんだ。私と話し合いはしたくないって、手紙も出しているんだけど、連絡をもらえ ないの。」 「そうですか…。」少し寂しげな声に聞こえた。それで、「でも、また会いに行くよ」 と、いうと、「はい。」と、微笑んでくれました。 このとき私の頭の中では、 “良太はきっと怒っているだろうなあ” そんな思いが走り抜ける と、“ほら、愛を連れ戻すぞ、あんな奴に任せておけるかよ” と、良太に言われたような気 がした。 また、「良太の件は何も解決していないんだ。」と、いうと、うつむき加減で、「そうですか。」 このときの小松君の様子を見ていてハッとしました。 そうだよね、良太のためにも弁護士さんを立てよう、…と、思った。 それで、小松君に、「もしかして、私、裁判に持ち込むかも…。」 と、いうと、「はい、良太は 一つも悪くないんです。頑張ってください。僕にできることがあれば何でもします。」と、力強 く答えてくれた。 小松君のこの言葉を聞いたときに、初めて気づいた。 良太を失って悲しんでいるのは私だけじゃない。小松くんも苦しんでいたんだ。そうだよね、 このままではいけないんだよね。と、私は自分に言い聞かせた。 次の日は、スキー場に連れて行き、思う存分遊んでもらった? “ありがとう。よかったらまた会ってね” そんな思いもそっと添えて…見送った。 良太の思い出をいつまでも追いかけている私は、相変わらずの日々を送っていました。 そんなある日のこと、私はいつものように、彼と良太の話をしていた。 話が盛り上がり、私は調子に乗って 「良太がね、良太が…」と、言いかけると、いきなり彼が 「俺だって良太と話がしたかったよ。今だったら、色々な話ができるのに、彼女の話とかも… 良太と話が弾むのに…、良太と話がしたかったよ。」と、言うと、下を向いてしまった。 辛そうな、悲しそうな彼の姿。その様子を見ていた私は言葉を失った。 良太を失って悔しいのは私だけじゃない。小松君も彼も同じ気持ちだった…と改めて知った。 彼の優しさに甘えて、私は自分の思いをぶつけたいだけぶつけて、 「誰も私の気持ちなんて分からない。私は辛いのよ。」と、いつまでも叫んでいるように思っ た。また、これ以上、悲しみをまき散らしてはいけない。まして私にエールをくれる人に…、 私と同じ悲しみを与えてはいけない。と、自分自身に何度も言った。 でも、もう1人の私は、「やっぱり、立ち直れないよ。」と、繰り返している。 その耳元で “時が心を癒す” と囁いた。だが、この言葉は私には通用しない。そう思うと葬儀 の時のお坊さんの言葉がよみがえった。 「今は辛いだろうけれども、必ずや時間が経つに連れて、その辛さは半減していてゆき、いず れ消えていく。時が解決してくれる。」と、ありきたりの言葉を述べた。 その瞬間に私は怒鳴った。「そんなの嘘に決まっているじゃない。私は今までに癒されたこと などは、一度もない!ふざけたこと言うな!分かったふりするなよ。」と、私はわめき散らして いた。私の声を聞きつけて、有紀さんがあわてて私の処に飛んできては、なだめた。 彼女にしがみついて大泣きした。 私に合う言葉は “時は残酷” この言葉のみなのです。 (笑っちゃうよね、お坊さんに向かって怒鳴っちった。その節は、すみませんでした。)
( no.52 ) 私に対しての相手? 良太の事故の相手の家族は、当初からいつも頭を下げて謝っていました。 その姿勢が思考力を失っていた私を悩ませた? 毎月、恒例のように奥様が電話をしてきました。でも、その内容は、自分の家庭の愚痴のよ うな話が主体になっていた。私は嫌気を指していましたが、素っ気なくしてしまうこともでき ず、悩みながらも電話で話をしていた。心の中では、“何で私が貴方の愚痴を聞かなくちゃ いけないの。”と、叫んでいましたが相手には届かず…。この状況もとても辛かった。 そんな電話が続いていましたが、ある日、私が質問をしました。「今、息子さんは…?」 「あっ、戻ってきて学校へも通っているのよ。みんな優しくて、早く忘れて、楽しく過ごそうと、 先生がクラスのみんなに言ってくれたの、良かったわ。」と、言う。 「えっ、いつ戻ってきたの?」 「もう、3ヶ月くらいになるかしら…」と、いう。そして、「息子は 直接会って謝りたいと言っているけど、貴方がね…、貴方がもう少し落ち着いてからにしよ うと、主人と話していたの。」と、言う。愕然としましたが、「私の息子ならば、直ぐにでも連 れて行くけど、それが礼儀だと思っているから…、」と、言った。 それから、約1ヶ月が過ぎると、相手の息子さんとご両親そろって長野へ来ました。 その後は奥様に、「弁護士さんに頼んだから、もう電話をしてこないで、」と、伝えた。 (ちょっと、遅かったね、弁護士さんに依頼をするのが…\(__ )) 良太と同様に、愛のことも気になっていました。 あれから、1年がたちました。愛、4歳の誕生日に再び岩手に行った。 愛は、私を見つけると飛んできました。そして、私が抱っこをすると、「ママと暮らしたい。ママ のお家へ行こう。もう、パパの処には帰りたくない。」と、泣きながら私に訴えた。 このまま連れて帰りたい、その思いに包まれましたが、愛にこれ以上、辛い思いをさせたくな いがために、そして、愛の願いを叶えたい、と思い、鈴木さんと話し合いの場を持ちましたが、 話し合いにはならず、何の解決も見いだすことができませんでした。 この場所には、私を含めて6人の大人がいました。それでも愛は、「ママと暮らしたい。」と、 はっきり言った。でも、鈴木さんと親戚の方々は、「絶対に渡さない。」と、言う。 私と眞は家に戻ると、愛の願いを叶えてあげたい、と思い調停申請の手続きをしました。 ところが、却下。不服申し立てもしました。答えは同じでした。 鈴木さんを含め裁判官の方々も、誰も愛の言葉に耳を傾けてはくれなかった。 子どもの人生を決めるのは、大人の意見なのだろうか…? どうして子どもの意見が通らない のだろうか…? 子どもの心の声に耳を傾ける大人がいないのだろうか…? 子どもが必死の思いで伝えようとしているのに、大人の心には届かないのだろうか…?
( no.53 ) 独りぼっちじゃない 最近になって思うことは、良太の写真が表情を変える?(そんなこと、あるわけがないよね。) そして、日に日に若くなっていくように感じて、とても不思議でした。 そんな写真を毎日、眺めていると、どうしても寂しくて涙がこぼれた。こぼれ出すと止まらなく て、自分を支えることが大変でした。 誰か助けて…、と心の中で叫んでいると、裕美さんのことを思い出した。 いつも元気をくれる。裕美さんの声が恋しくなって受話器を握りしめると彼女に電話を入れた。 久々に彼女の声を聞いた。何も変わらない彼女の声に、私はホッとして弱音も吐いた。 「立ち直れないよ…」 すると彼女は 「立ち直れなくていいんだよ。当たり前なんだよ。でも…」 と、言ってくれた。この言葉を聞いた瞬間に、なぜか心が軽くなったのです。鉛を飲み込んで いたかのように重くて重くて仕方がなかった心が、一瞬にして軽くなった。 『当たり前…』 その言葉が何度も私の心の中でこだました。 立ち直らなければと、思う気持ちが自分で自分の首を絞めていたのかもしれない。そう思うと 目の前が急に明るくなったような気がした。 「ありがとう。立ち直らなくてもいいんだよね。当たり前なんだよね。うん、分かっている。大丈 夫。」 そういうと、電話を切った。 私を支えようとしてくれる人たちを巻き込んではいけない。と、彼女は言いたかったのだろうと 思った。 それに、私には、まだまだやらなければならないことが沢山ある。頑張ろう。私は独りぼっち じゃないんだもん。たくさんの友達が、みんなが見守ってくれる、その人たちのためにも…。 そんな思いを胸にしまった。無理をせずに、前を見ることができるかも…? そんな思いが私を 包んでくれた。 頭の中では、分かっていますが、どうしても…やっぱり…苦しい。 私だけの力では、自分を立て直すことができないことを実感しました。 でも、もう二度と会えない良太の名前を呼び続けて、泣き続けることにも疲れ果てた。 誰か助けて…と心の底から叫んでいた。 病院に行きたい…でもどこにあるの? カウンセリングを受けたい…でもどこにあるの? どうすればいいの? 誰か教えて…。と、心の底から悲鳴を上げた。 私は町をさまよっていました。病院、カウンセリングしてくれるところは…そんな思いを走らせ ながら歩き続けた。でも見つからなかった。私の目に飛び込んできたのは本屋さんでした。 飛び込むと、私を救ってくれる本はないだろうか? どういう本を探せばいいのかも分からずに 本を探し続けた。 すると、【前世療法 2】(ブライアン・L・ワイス著、PHP研究所) という本を見つけた。この本の 著者を以前にテレビでみました。そして本を購入して家に戻って読み始めた。 『人は何度も何度も生まれ変わり、何世紀も繰り返して巡り会っている。そして、必ず自分の 周りにいる。肉体は滅びても、魂は生きている。』 この文章をを読んだとき、そうだよね、良太も生きいるんだよね。そして、またいつの日にか きっと会えるんだよね…会いたい。そんな思いを抱きながら読み進めた。 『過去世で学んだことは、今生で生かさないと、未来へも引きずる。同じ間違いを繰り返す』 とも書いてあった。この言葉を何度もかみしめた。 すると、私自身が頑張らなければ未来の私も良太も、また同じ人生を歩むことになるんだ。 そう思ったら、そんなのイヤだぁ。未来で良太に会えたら、今度こそは良太の幸せを見届け たい。そう思うと、良太のためにこの世で私が頑張らなきゃ、違う道を築かなくちゃ、 新しい命の良太が苦しむ? そんなのもう二度と…イヤ。 歯を食いしばって前を見よう。今までの私の人生は、ここでピリオドにしよう。もう二度と繰り 返したくない。こんなカナシイ人生。新しい人生を歩みたい。そう思った。
( no.54 ) 私の心の病 私は、この時点で心の病気が治った…??? いえ、またまだ続いていたのです。。。でも、負けないよ。…ぴぃす((^へ^)v…