子どもがおねしょをすると親が悩む、なぜかな? 病気だと思うのだろうか? それともお布団が濡れるから? 後片付けが大変だから? もう少しだけ待って必ず直るから。

⑪ おねしょと恐怖

不安定な気持ちは、おねしょという形で現れる。
気持ちが落ち着けば、きっと、おねしょは直ると信じている。

次の日の朝、目を覚ました未夢は、隣に寝ているはずの悠季の姿が・・ない。
驚いた未夢は、悠季の名を呼びながら部屋の中を探し回った、
玄関で鍵と靴を確認、お風呂場のドアを開けて確認、おトイレのドアも開ける。
押し入れやタンスの中と、全てのドアを開けて悠季の姿を探し回った。

見つからない・・・。

気持ちを切り替えて、今一度・・部屋の中を歩き回る、タンスの横、カーテンの中・・と、隙間までも事細かく、自分の目で、手の感触を頼りに・・悠季を探す。
その時、未夢の手が悠季の身体を見つけた、

ホッ、と、顔が緩んだ、
「なあ~んだ、見つけたよ、ここにいたんだ、心配したよ、どうしたの?」

明るく声を掛ける未夢の手が悠季へ伸びた、悠季の身体に触れた手は生冷たさに触れた、
反射的に手が引く、その思いを消すように両手で悠季を抱き上げると、胸に抱えた。

未夢の腕の中で、小さく、小さく、固まる悠季、その身体は・・ガチガチ。
固まった身体を包み込んでいるのは、濡れたパジャマ・・いつもより重く感じた。

「そおぅかぁ、おねしょ、しちゃったんだぁ」と、
明るく声を掛けた未夢は、悠季を抱いたままお風呂場へ向かった。

未夢の腕の中で、まるまる悠季の身体は、まるで、でっかい鉄の玉のように重く、 表面はツルツル・・指がかからない『落とさないように、落とさないように、』と慎重に脱衣所まで運んだ。

腕の中からゆっくりと悠季をおろす、

「着替えようね、濡れたパジャマを着ていると、風邪、引いちゃうよ。」
未夢の視線は悠季を見つめて、手はパジャマを脱がせ始めた。

その時、悠季の顔が、やっと持ち上がった、

「怒らないの?」と、顔には大きな疑問符が張り付いていた、
「怒らないよ。いいんだよ。おねしょをしても、ねっ。」と、笑みを返す。

偽善さんは怒ったよ。悠ちゃんは叩かれた。ものすごーく、恐かった。」
必死に話す悠季の瞳は、その当時の恐怖を、未夢へ伝えていた。

  『隠すという行為』は、怒られた、叩かれた、などが生んだ『恐怖』である。
  その恐怖から、逃れたい回避したいと思う気持ちが、隠すという行動に表れる。

「そうか、叩かれちゃったんだ、酷いね、痛かったね。叩かなくてもいいのにね。
おねしょは、ねっ、子供だから出来るのにね~ぇ、
おねしょの処理なら任せて。良太なんか小学生になってもしていたよ、(笑)。
ねっ、心配をしないできっと直るから、その時まで、おねしょをしてもいいんだよ。」

手を動かしながら、ゆっくりと明るく話す未夢が微笑む。
不思議マークが取り切れない悠季は、ニコッと返した。

「それでね、ママとお約束をして欲しいの。
おねしょをした時は、必ず、ママに教えて欲しいの。

ママは絶対に、怒らないし、叩かないから、ねっ。
悠季が濡れたパジャマをいつまでも着ていると、風邪を引いちゃうよ。
お腹も冷えて、痛くなっちゃうよ。
だからね、
おねしょをした時には、必ず、教えて欲しいの、ねっ。
直ぐに着替えようね。ねっ、約束したよ。」

自分の身を護るために学んだ【隠す】という行為は【自分に嘘をつく】行為。
この流れを繰り返すと、
自分でも気づかないうちに、自分の心に沢山の傷(嘘)を作ってしまう。
自分に嘘をつく事を学ぶよりも “自分に正直になる事” を学んで欲しい。

願いを込める未夢。

当時の悠季がおねしょをした後に起こす行動パターンには、3パターンある。
 ① 部屋の隅で小さくなって隠れる。
 ② 悠季がいつも起きる時間まで、ベッドの中で寝たふりを続ける。
 ③ ②の逆パターンで、おねしょをした後に起きて直ぐに着替えを済ませる。
   その後は、何事も無かったかのように、いつもと同じように時を過ごす。

この流れを生み出す原因は『怒られた』『叩かれた』などの暴力行為から、逃れるために
学んだ行動なのです。おねしょ事件は、悠季が抱える恐怖の大きさを物語っていた。

予想を超える長期戦に未夢はお手上げ状態、そんなときに慎也を交えて夕食を囲んだ。
未夢は食事という場で、おねしょの話をする事に少し・・戸惑った、が、

「慎也はいつまで、おねしょをしていた? 良太は小学生になってもしていたよ。」
「俺か? そう言えば、俺も小学生の時までしていたな。」

ご飯を食べながら笑みを浮かべながら、いつもと変わりなく話をしてくれる慎也。

「その頃になるとさ、でっかい地図が、かけるよね~ぇ、」
「かける、かける。世界地図なんてもんじゃないよなぁ~。
その頃になると、途中で気づくけど布団の中でするのも気持ちいいんだよ~、」

おねしょの話で盛り上がり、笑い合う2人。
いつもの悠季なら、こんな時は、必ず仲間入りするのに・・
この時ばかりは、全く、悠季の声は・・聞こえてこなかった。

それどころか『おねしょ』『笑う』この関連性に疑問を持つように、
とても不思議そうな顔をして、未夢と慎也を見続ける、
そんな悠季に未夢が視線を合わせると、

「ねっ。悠季もいいんだよ、良太も、慎也も、おねしょをしていたでしょ。
悠季だって、おねしょをしてもいいんだよ。もちろんママもしていたし、ねっ。」

「そうだぞ、おねしょは、子供のうちだけだから、なっ、
大人になってしたら、恥ずかしいぞ。今のうちに、いっぱいしておけ、なっ。」

慎也の声も未夢に釣られたのか、明るく弾ませてくれた。

「そうだよ、おねしょは子供の特権だもん。子供だからこそ出来るんだもんね、ねっ。」
「うん、」と、未夢に初めて返事をしてくれた悠季。

後は、悠季の笑顔に託す、

「おねしょをした時のお約束があります。
必ず、ママに教えて欲しいの。悠季が次の日も気持ちよく眠れるように、
ママがお布団を乾かしてあげるから、お布団だって、濡れたままじゃ可哀想だよ。
『乾かしてくれ~、濡れたままじゃ、悠ちゃんが可哀想だ~ぁ。』、なんて、
お布団も言っているかもよ。だから、教えてね。約束したよ。」

ゆっくりと話す未夢に、笑みを浮かべる悠季、
その笑みにたくさんの願いを込めた未夢。

その後、2度のおねしょは内緒。3度目のおねしょは、堂々と大きなシーツを引っ張って、台所にいる未夢のところまでやってきた。

「ママ、おねしょをしちゃった。だから持ってきた。」と、明るくにこにこと報告。
「はい、偉いね。教えてくれてありがとうね。」と、頭を撫でる未夢はホッとした。

子どものお漏らしやおねしょは、精神状態を現している事が多いのです。
つまり子どもが発するSOSです、だから怒らずに子どもを見守って欲しいです。
子どもの気持ちが落ち着けば、必ず、直ると信じています。(私がそうだった・・未夢(^^)v)

でも、悠季の場合は『おねしょを隠す』という行動だった。
それは、悠季が受けた暴力の脅威を表している証拠なのです。

それでも、この時の未夢は、心の底から喜んでいた、本当によく頑張った。
同時に、悠季の心に秘められた恐怖の大きさを考えずには・・いられなかった。

そういえば偽善も小学生の時までおねしょをしていた、と、偽善から聞いた事がある。
自分はしていても、子どもの悠季には怒るんだ・・・サイテイ。

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