子どもが大人に助けを求めた時は、子ども自身の命の危機を察知した時。この時に救い上げないと、子どもの命は危ない。誰が子どもの声に耳を貸す?

⑳ ぼろぼろ、クタクタ・・(心の悲鳴)

ここ1年、常に「もういいよ、よく頑張ったね。大丈夫、貴方がこのまま寝込んでも、誰も貴方を責めないよ」と、優しい囁きが聞こえてくる。

『その声に甘えたい・・』と、思いを寄せながら、崖っぷちを歩き続ける、
ほんのちょっと気を緩めれば、足を踏み外せば、そのまま寝込める・・・そんな日々を刻む。

悠季と未夢の『原因不明の体調不良は、ずーと、続いている』とは、言っても病院で診察を受けた訳ではない、ただ言える事は日を重ねる事によって悪化している事だった。

そんな日々を刻んでいると・・・、今年も迎えた魔の2月末、悠季がダウン、後を追って未夢も翌日ダウン。昨年同様に今年も2人揃ってインフルエンザを患った。

昨年は、インフルエンザの脅威に見舞われ2人とも、たっぷり1週間強寝込んだ。
ところが、今年は、マンネリした気怠さが勝ったのか、インフルエンザの煩わしさが全くなく、未夢は1日で床を離れ、悠季は3日目に床を離れた。

マンネリした気怠さが運んでくるものは、ぼわぼわ、ほわほわ・・いつまでも、すっきりしない違和感の中に、身を置き、動きたくない、何もしたくない時を刻む。

そんな気分にぴったりマッチした場所は、リビングに作ったコタツの中、ぬくぬく、ほかほか、このままここに居た~い・・猫の気持ちが解る(^0^)・・ゴロゴロとゆったりと時を刻む。

『これが “病は気から” って、いうのかな?』と、バカな事を過ぎらせる未夢。
そんな未夢の隣にいる悠季の目からは、大粒の涙・・が、こぼれ落ちた。

「苦しいの? まだ辛いの?」と、声を掛ける未夢の手が、悠季のおでこへ。
「大丈夫」と、首を振りながら応えた悠季は、涙を拭いた。
「どうしたの・・?」
「チャッピー(愛犬)ね、偽善さんが行くと『ウーー』って、うなるんだ。」

話し始めた悠季だったが・・・口を閉じる。
辛そうな表情を滲ませる悠季に代わって、未夢が口を開く、

「そうか・・、そう言えばね、ママは、チャッピーに怒られたことがないなぁ・・。
でもね、ママは、チャッピーに怒られる、と思っていたんだ、
だって、チャッピーは悠季の大切な友だちでしょ、だからね、悠季の代わりに・・(^O^)

でもね、ママを見たチャッピーは、しっぽを振ってくれたの。
嬉しかったな~ぁ。」

1つの想い出が語られると、話している人も、聞いている人も、その話の中に潜む、言葉から何かを思い出す、まるで連想ゲームをしているように、想い出が甦る

「チャッピーは、優しいよ。 (にこっ。子どもを自慢する親の顔を見せた)
あのね、偽善さんとチャッピーと悠ちゃんで、川へ遊びに行ったんだぁ。

その時、悠ちゃん滑っちゃって、川へ落っこちゃったんだ。
びっくりして『助けて、助けて』って、叫んだんだ。

それなのに、偽善さんは、助けてくれなかった笑って見ていた
悠ちゃんは、何度も何度も、叫んだのに・・・」と、

口を閉ざす悠季は、その当時の恐怖を甦らせたのか、下を向き涙を食いしばる、が、

「でもね、チャッピーが助けてくれたの。」と、
自分の気持ちを切り替えるように、未夢へ、にこにこ、と。

「よかった、よかったね、チャッピーに感謝だね。偉いね、チャッピーは、」
悠季から笑みをもらった未夢、も、悠季へ笑みを返す

「うん、悠ちゃんのところまで泳いできて、
悠ちゃんがチャッピーに触ったら、沈んじゃって(にこ)、
チャッピーびっくりして、悠ちゃんから少し離れて、泳いでいた。(にこ)

そのときね、チャッピーが『こうやって泳ぐんだよ』って、言っているみたいだった。
だからね、悠ちゃん、チャッピーの真似をして、一生懸命に手を動かしたんだ。
そしたね、泳げたよ。」

当時を思い出すのも・・話すのも・・苦しそうなのに・・・、悠季はゆっくりと話す。
それでも、ジェスチャー混じりで、話す悠季の顔には・・笑み、

「良かったね、悠季も犬かきが得意だね、わんわん」茶化す未夢。

偽善への怒りが込み上げるのと同時に、離婚前に未夢も偽善の不気味な笑みを見ていた。
その出来事は、未夢が台所で中華鍋を振っている時に、突然、髪の毛が燃えるくさい匂いがした、
振り返ると、背中から赤く燃える炎と、不気味な笑みを飛ばす偽善の顔を、同時に目にした、
驚いた未夢は、反射的に「キャーッ」と声が出ると、偽善は笑みを広げた。 そんな偽善の顔が未夢を冷静にさせ、洋服を脱ぎ火を消した。すると、偽善の顔から笑みが消えてがっかり顔を見せた。
このときの洋服は袖と背中が黒い燃えかす、それよりも、あの時に見せた偽善の顔に、未夢は恐怖を覚えた、まるで『なんだ、死なないのか、死ね』と言っているようだった。

ゆっくりと悠季の話が続く。

「チャッピーの赤ちゃんが生まれたの。
白いのと、黒いのと、チャッピーと同じ色(黒白)の赤ちゃん、全部で4匹生まれたの。
みんな、ちっちゃくて、可愛かったよ。でもね・・・、みんな、死んじゃた。」

いきなり話を切った悠季は下を向き、まるで、記憶を遡っているかのように・・、
とても複雑な表情を浮かべた、が、未夢へ視線を送ると、微笑んだ。

「お母さんのところでね、子猫が生まれたの。
それでね、もらったんだ。そしたら、偽善さんが台所で、首を絞めていた。
だからね、悠ちゃんが偽善さんから取り上げて、悠ちゃんの布団で一緒に寝たんだ。
こんなに小さくて、可愛かったよ。」

両手で猫の大きさを示すと目を閉じた、そんな悠季の手の中には、まるで子猫が居るように、顔をスリスリ・・、すると、目を開けた悠季の視線は、未夢へ、

「でもね、朝起きたら、コタツのテーブルの上で死んでいた。
あれは、偽善さんが殺したんだ。」

優しい顔を、怒りの顔に変えて・・涙する悠季。
未夢は、言葉が浮かばない・・・。

「でもね、お母さんに見つかって、偽善さん怒られていた。(未夢が頷く)
そしてね『もう一回あげるから、今度は、殺したらダメだよ』って、言われてもらってきたけど、
次の日の朝、コタツの側でんでいた。」

   悲痛な表情のまま未夢へ視線を送る悠季。
   悠季の話しに呑み込まれた未夢。

   音が消えた部屋の中で、
   悠季は、未夢からの言葉を待っていた、
   未夢は『父親が子猫の首を絞めているシーン』を見た、
   その当時の悠季の思いが、ちらつき・・、言葉を失う。

   それでも悠季の視線は、
   未夢からの言葉を待ち続けている・・。

「赤ちゃん・・可哀想だね、可愛いのに・・、可愛かった、でしょ」
やっとの思いで喋った言葉だったが、未夢は自分が情けなくて情けなくて、悔しかった。

それでも、未夢の思いに応えるように、
「うん、可愛かった。悠ちゃんの手に乗るんだ、毛も柔らかくて、気持ちいいんだぁ。」

目をつぶり、子猫の赤ちゃんを思い出す・・と、
殺された子猫の赤ちゃんも、思い出す・・
そのとき、突然、悲鳴のような声で、

「ママのお腹の中へ戻りたい。」と、逃げ惑うように叫び、泣き崩れた。

大好きなチャッピーの赤ちゃんの死を見つめ、
子猫の首を絞める、父親(偽善)の姿を目撃する、
子猫の死、そして、コタツで死んでいた子猫の姿・・。

『過去を消したい、全て消したい、今一度、やり直したい』と訴える。
泣き続ける悠季を、未夢は、ただ抱きしめることしか出来なかった。

突然、顔を持ち上げると、
「『ママと暮らしたい』って、言った時、偽善さんが怒鳴った。
『お前までもが俺を捨てるのか』って言って殴った。ものすご―く、こわかった、怖かった。」

当時の恐怖を思い出す悠季は、
怒濤のように、しゃべり、大声で泣く、を繰り返す。

「ママに電話をした時、台所に居た偽善さんは、悠ちゃんに向かって何かを投げつけた
あのとき、なんとなく振り返ったら、悠ちゃんの目の前を何かが通り過ぎた。

振り向いたから、ぶつからなかったけど、
あの時に振り向かなかったら・・、ぶつかっていた。

ものすごーく、こわかった。恐かった。(ポロポロと泣く)

コタツで絵を描いていた時も、突然、後ろから何かが飛んできた。
悠ちゃんは何もしていないのに、飛んできた、
この時も、悠ちゃんが動いたから、ぶつからなかったけど、
もしも、動かなかったら、ぶつかっていた・・、

ほんとうに、ほんとうに、
ものすごーく、もの凄ーく、怖かった、怖かった。

このとき悠ちゃんは、何もしていないのに(悪い事、怒られる事)、
それなのに・・、飛んできた。」

当時の恐怖を語る悠季は、
どんな言葉を使えば、伝わるのか・・と、
必死に、未夢へ伝え続ける。

『お前が悪いから、怒るんだ、殴るんだ』と、偽善に散々言われ続けた悠季。
『何もしていないのに、怒った』と、訴えてる悠季。
偽善さんは嘘つきだ、いつも殴られていた』と、
他人には『殴っていない』と話す偽善の姿に、怒りを語る悠季。

記憶は、1つの単語で、次から次へと思い出す、記憶のループが巻き起こる。
何度も・・何度も・・甦り、当時の恐怖も、何度も何度も襲ってくる。

思い出したくない、だから、話したくない、言葉にしたくない、その恐怖・・、
今、必死に、語ることで・・自分の心と向き合っている、悠季。

どんなに、なんども、怖かった、と言い放しても、
その当時の悠季が抱えた恐怖は語りきれない。

お母さんにも『ママと暮らしたい』って、言ったんだ。
そしたらね『あっちは怖いところだから、ここで暮らした方がいい』と言われた。
だから、もう、ママと暮らすことをあきらめた。」ワァーーと、泣き続ける。

未夢の胸の中で声を張り上げて泣き続ける悠季、

この世に生を受け僅か3年で、孤独を学び、恐怖を学び、絶望までも学んだ。
その人生は、逃げたくとも逃げる術もなく、ひとりぼっちで耐えつづけた・・

あまりにも酷い・・。
それでも悠季は、封印せず、今、未夢へ語り続ける。

悠季の話を聞く未夢は『ほんとうに、連れてきて良かった』と噛みしめる、と同時に、
生きていてくれて、ほんとうに本当にありがとう。悠季、よく頑張った』と心から感謝。

悠季が『お母さん』と呼んでいる人は偽善の兄の奥様、岩手で暮らす悠季が、一番、信頼を寄せていた人。この人に否定されてしまったら、悠季は諦めるしかなかった。ただ言えることは、子供がこれほどまでに大人に『助けを求めている時』は、自分の命の危険を察知したからです。

大人の証言ほど当てにならないものはない。 偽善の実家も、悠季が信頼を寄せていたお母さんも、偽善の暴力を知っている。それでも『虐待はしていない』と主張し続けて『子煩悩の評価も得た』

殴る・蹴る・脅迫はもちろん虐待だ、動物を殺すのも虐待だ。しかも悠季が目にするところにわざと置くことも虐待だ。川で助けなかったことも虐待だ。ご飯をあげないのも虐待だ。意味のない怒鳴り声も脅迫であり虐待だ。モノを投げる行為も虐待だ。

ところが、偽善を含めた家族は、これら全てを『躾』だと主張している。
虐待とは弱者の心に傷を付ける』事である。

1番の問題点は、他人以外の家族が知りながら、虐待として見ていない事だ。
加害者は『被害者意識が強い』だから、被害者の思いは届かない。

悠季が『死ぬのが恐い』と連呼した意味が、はっきり判った。
悠季は「次、殺されるのは、私だ」と、思っていたのかも知れない。

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