登園拒否をした子どもが、再び幼稚園へ戻る事が出来るのは、やっぱり先生の姿勢が大きい。休み続けた子どもの自宅へ毎日電話のベルをならした。感謝です♪

⑬ 幼稚園は居場所

居場所とは、自分が必要だと、自分で感じられる処だと思う。きっと、子どもも、大人も、誰でも、家庭以外に居場所が必要なのです、 それは、生きるために、精一杯、頑張るために、、

やっと、やって来た、悠季が待ちに待った幼稚園への登園日、それなのに、悠季は5日前から体調を崩し、昨夜は咳が酷く睡眠時間も十分に取れずに・・朝を迎えた。

悠季は、制服を着てカバンを提げて未夢を待つ、その姿は「幼稚園へ行く」と訴えていた。

「大丈夫? 夕べ、咳、酷かったね。今日は、幼稚園お休みしようか?」
「幼稚園へ行きたい。」と、元気のない声で、はっきりと返す。
「そうだよね、今日という日を、毎日、待っていたんだもんね、行きたいよね。」

悠季を見つめる未夢は迷った、が、悠季の思いが・・伝わってくる、今一度、体温を測ると、悠季の意志に従う事にした。 車に乗り込んだ悠季は心なしか元気がない・・ままに、幼稚園に着いた。

口を閉じたまま車を降りた悠季は、方向転換すると、真っ正面で幼稚園を捕らえた。まるで『幼稚園だ、行くぞ』と、自分に気合いを入れるように、見つめていた。

未夢が車のドアを閉めると、悠季の足は、一歩を踏み出す、幼稚園の門へ視線を延ばしたまま、進む。その姿は、悠季の意思を表すように、力強く、一歩、また一歩、前へ踏み込む、

未夢は、そんな悠季の後を付いていく。

門の前には、入り口を塞ぐように大きめの幼稚園バスがドンと止まり、そのバスから降りてくる大勢の園児たちは、まるで、アリの行列のように、一列に、一直線に、門へ、向かって歩いていく。 そして入り口には、園長先生の姿があり、園児1人1人と握手して挨拶を交わしていた。

その光景に圧倒された未夢の足が止まる、悠季は全く動じずものの見事にすり抜けた、ところがその瞬間に、園長先生の手が伸び悠季の手を握り「おはよう」と、声を掛けた。

悠季の視線は、園長先生へ注がれるのではなく、握られた手をジッと見つめたまま固まった。 慌てた未夢が悠季の後ろに立つと、悠季の頭に手を置き「おはようございます」と、挨拶を促しながら、悠季の頭も下げた。

そうして門をくぐった悠季は、左手にあるプールを差し「プール教室へ入りたい」と、始めて声を出した。 そんな悠季にホッとする未夢は、
「分かっているよ。行くよ。教室へ。ママが帰りに手続きをするからね」と声を掛ける。

2人は、広く大きな園庭を見つめて教室を目指した。

幼稚園へ通い始めて1週間が過ぎると、園の中で行われている習い事のプリントを持って帰ってきた。その後は、体験教室を廻り、悠季が入部したい習い事をはじめる。

幼稚園へ通い続けて1ヶ月が過ぎると、悠季は目に見えて変化した。

落ち着きのない態度、何かに対して直ぐにイライラする様子、投げやり的な言葉遣いなどが・・、気がつくと消えていた。正に『環境は人を変える』と、思えた出来事だった。 また嬉しいことに悠季の生活リズムまでも整い始めた。

そんな悠季を見つめている未夢は、
悠季にとって『幼稚園は欠かす事の出来ない、大切な場所だ』と確信した。

⑬ 先生の姿勢。(幼稚園時代)

忘れられない恐怖は親から受けた暴力、その恐怖を思い出すのは・・『僅かな切っ掛け』だった、 すると、この時まで刻んでいた日常を刻むことができずに・・引きこもりの道へ・・。

12月、色々バタバタする、この月に、悠季の心も乱された。

未夢がいつものように幼稚園へ迎えに行くと、“ムッ”、の表情で前を見据える悠季がいた。

  『あれ、何か怒っている?』と、悠季を目にした未夢が過ぎらす。
   いつもの悠季は、未夢が迎えに行っても家へ帰るのを惜しむように、
   友だちと楽しそうにおしゃべりを弾ませている・・のに・・。
   今日は、見るからに怒りを噴射、ムッ、ムッ、が広がっていた。

そんな悠季が未夢を見つけると、スタスタと未夢に向かって歩いてきた、が、 未夢の目の前で『行くよ』と、無言の指示を出し、カーブを切ると、真っ直ぐに門を目指した。

『ムッ』の表情のまま、車に乗り込んだ悠季は、前を見据えて、
『早く出して』と、無言の指示を出す、そんな悠季の怒りを乗せて車は走る。

「どうしたの?」と、声を掛けた未夢、助手席の悠季は無言・・・しばらくすると、
「幼稚園へ、もう行きたくない。」と、発すると、再び、口を閉じた。

「どうしたの? 悠季は幼稚園が大好きじゃない。」
驚いた未夢が声を掛けたが、悠季の口は開かず・・、車は走り続けて家に着いた。

口を閉じたまま部屋に戻った悠季は・・思い詰めた顔のまま、口を開く、

「今日ね、亜子ちゃんと花菜ちゃんと3人で遊んでいたの、
そのとき、剛君がいきなり悠ちゃんの後ろに来て、
『バカガキ』『クソガキ』って言うんだ、そしてね、後ろから突き飛ばされた。」

一気にしゃべり続けた悠季の顔は、ちょっぴり頬を膨らませてプリプリしていた。
そんな悠季を見るのが久しぶりだった未夢は、懐かしさと嬉しさが込み上げた。
また、怒った悠季の顔もメチャ可愛くて・・、

「負けるな、やられたら、やり返しちゃ、悠季なら出来る。」

笑顔満開にした未夢は、ルンルン気分で言ってしまった。
一瞬、息を呑んだ悠季の顔が『サイテイ』と語り、『プイ』と背を向けた。

「ごめん」と、慌てて謝った未夢に届いたのは『時、既に遅し』と、なびく冷たい風だった。

翌朝・・悠季の怒りは消えず、未夢を無視し続ける。
でも、幼稚園へ行けない悠季は、元気がなく、寂しさに包まれていた。

悠季が気になる未夢は「幼稚園へ行かないの?」と、声をかけるが、
悠季は、“ボー” としたまま・・・無言。

そんな悠季を目の当たりにした未夢は、自分の対応の悪さに思いっきり落ち込む。
『偽善さんと重なったんだよね、知ってる、ごめん』と心の中で謝っていた。

未夢は渋々、幼稚園へ休みの電話を入れる、が、
『幼稚園へ行きたい』と、言っている悠季の声が・・・聞こえる、

「ほんとうに、行かなくても良いの? 今なら、まだ間に合うよ。
悠季は幼稚園へ行きたいでしょ、連れて行ってあげるよ。」

必死に声を掛ける未夢、すると・・

「行きたくない、もう、行かない。」ボソボソと響かせる声。
「えっ、辞めちゃうの?」
「違う、幼稚園へ行こうかな・・」と、寂しさを広げた。

悠季が、未夢を無視し続けた1日が終わろうとしていた、その時、

「どうしました? 風邪でも引きましたか?」
電話の向こうから優しい声が未夢に届く、その声は悠季のクラス担任、祐子先生だった。

未夢の顔がホッ・・
「いえ、悠季は元気です。」と、歯切れ悪く応える未夢。
「えっ、それでは、何か、ありましたか?」

再び、問いかけてくれる祐子先生の声に、胸をなで下ろす未夢は、すがりたい思いを忍ばせて・・、視線を悠季へ流した・・が、今も、なお、未夢へ背を向けたままだった。

「実は『虐められている』と、言いまして・・、
『幼稚園へ行きたくない』と、言い張って・・」

「う~ん、おかしいなぁ、悠季ちゃん、友だちとグループのような形を組んでいて、
いつも楽しそうに遊んでいますよ、虐められているようには見えないのですが・・」

祐子先生は、悠季が園で過ごす姿を振り返りながら、登園拒否の原因を探している様子だった。
そのため幾つかの質問が未夢へ飛ぶ、が・・、未夢は、何も応えられなかった。

困った未夢の視線が悠季へ流れると・・・

「悠季に変わりましょうか?」と、声を弾ませた。
「変わって頂けますか?」と、ホッとするような祐子先生の声が返ってきた。

『そっか、そっか、初めから、こうすれば良かったんだ』と、未夢の心が少し軽くなり、 悠季へ向かう足取りも軽く弾んだ。そんな未夢が悠季へ受話器を差し出すと、

「やだ、いいよ」と、怒り口調のまま口を閉じた。
それでも未夢は、何度か、電話に出る事を繰り返したが、頑固にムサレタ・・。

「すみません、どうしても電話に出たくない、と、言い張りまして・・
本当に、すみません」

「大丈夫ですよ、では、明日はなんとか幼稚園まで連れてきて頂けますか?
待っていますので、」と、言葉を残して電話が切れた。

そして翌日、次の日、その次の日と・・、悠季は休み続ける。
また、そんな悠季を案じて祐子先生も、毎日、電話のベルを鳴らし続けた。

  電話は、祐子先生の仕事が済んだ後かな・・と、思える時間帯と、
  自宅へ戻った夜9時前後に「こんな遅くにすみません」と、言葉を添えて、
  悠季を心配し続けてくれた。

未夢の視線がカレンダーを見つめると『登園拒否して・・1週間』・・と、過ぎらせると『限界だなぁ・・、なんとかしなきゃ』の思いから、祐子先生と悠季の思いを・・考え始めた。

  電話も触れようとしない、悠季の怒りって・・私だ。
  それなのに祐子先生は悠季を心配して、毎日、声を掛けてくれる。
  このことは悠季へ伝えたい、

そんな思いを抱えて、未夢はキッチンテーブルを拭きながら、
「いいなぁ、悠季は、先生が心配をしてくれて、良太は登校拒否をしても、先生から一度も電話をもらえなかったよ。悠季は良かったね、心配をしてくれる、先生がいて、ねっ。」

  未夢の視線が悠季へ・・すると、悠季の視線が未夢へ、
  『チャンス』と、過ぎらせた未夢は、悠季の側へ飛んでいった。
  (この一週間、悠季は未夢と視線を合わせることもせず、無視し続けていた)

「悠季は卑怯だよ、逃げるなよ、きっと、今日も、祐子先生から電話が入るよ、
この電話は、悠季の事が心配で、先生が掛けてきてくれる、その事は判るよね。
だから、悠季は先生に応えなきゃいけない、

悠季が幼稚園へ行く、行かないは、悠季が決めれば良い、
行きたくないのなら、悠季の口から、先生に言いなさい。
心配をしてくれる先生に、直接、悠季が応えなきゃ、ダメ、
逃げてはダメ、先生と話をしなきゃダメ、悠季の口から伝えなきゃダメ、

いい?

今日、祐子先生から電話が入ったら、絶対に電話に出て、いい?
約束したよ。」

未夢が一方的にしゃべり続けて口を閉じると、同時に電話のベルが鳴った。
この絶妙なタイミングに感謝しながら受話器を取ると、祐子先生の声が聞こえてきた、
『やったー』と、口を閉じる未夢は、悠季に「祐子先生から」と、受話器を手渡した。

受け取った悠季は、恥ずかしそうにちょっぴり笑みをこぼしながら、物陰へ隠れた。
そうして10分くらいの時を刻むと、物陰から出てきた悠季は、未夢へ

「ママに代わって、だって」と、ホッとするような笑みをこぼして受話器を差し出す、

「明日は、なんとか連れてきてもらえませんか、幼稚園に来てくれたら、 後は、私が、なんとかしますから、是非、お願いします。 連れてきて下さい、私、待っています。」

受話器から伝わってくる祐子先生の熱意、温かさ、心強さに・・、
未夢は脱帽すると共に感謝しきれないほどの思いで、いっぱいになった。

翌朝、悠季は幼稚園の支度を終えて、未夢を待っていた。
久しぶりの登園のせいなのか、悠季から緊張が伝わってきた。

表情は強ばり口は閉ざされたまま、ちょっぴりガチ・・そんな悠季を連れて幼稚園へ、
ガチガチの悠季と手を握り教室へ向かうと、祐子先生は下駄箱の前に座って悠季を待っていた、

未夢の頭が下がると、先生の頭も下がり悠季へ声をかける、
「悠季ちゃん、おはよう、待っていたのよ。」と、いつもの優しい笑顔と声が流れた。

先生の優しさに触れた悠季は、緊張がほどけ、ほんのり笑みも浮かべた。
そんな悠季にホッとした未夢「よろしくお願いします」と、頭を下げて先生と悠季を見守る。

あれから1週間が過ぎると、幼稚園へ戻った悠季に、ご褒美が届いた。

「ママ、ママ、サンタさんが来たよ♪ 手紙とプレゼント、始めて来たよ♪
岩手にいる時は来なかったから、悠ちゃんのところには来ないんだ、と思ってあきらめていたの。
うれし~い、嬉しいなぁ、うれしいな~ぁ。」

プレゼントを抱きしめて、はしゃぎ回る悠季。
そんな悠季を見つめて、ほっとする未夢の顔にも笑みが広がった。

悠季の登園拒否はこの時の1度だけ、その後は、このような休みはせず毎日の時を刻む。
悠季と先生の間にどんな話がくり広がったのか、未夢は知らない。
未夢が知っているのは『悠季を救ったのは、紛れもなく祐子先生の姿勢』この事実だけだった。

良い幼稚園に出会え良い先生に出会えた、この出来事は、悠季を生き生きと輝かせてくれた。本当にありがとうございました。 親って、けっこう無力なんですよね。それでも、先生と協力する事が出来たならば『子どもは救われる』そんな実感を得た出来事だった。

未夢は悠季から嬉しい言葉をもらった「ママの子供でよかった」と。 (^^)v

※『1週間』という日数は、引きこもり日数の最大日数だ、と・・経験上から、(^0^;) 考えています。 私が考える『引きこもり』とは自分を見つめ直す時間、だから1人になる必要がある。
でも、1週間を超えると色々問題が起こります、その前に、自ら引きこもることを止めましょう。

※親は『子どもから相談を受ける』事があります、この流れは、親としては嬉しい出来事ですね。
だから心が弾んじゃう、でも子どもにしたら真剣に悩んでいる事・・、なんですよね。 くれぐれも未夢と同じような態度は止めましょう、親だからこそ子供の悩みに真っ正面から向き合う姿勢が必要なのです。くれぐれも未夢と同じような行動は、止めましょう、ねっ、ハイ(_ _ )/ハンセイ

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