虐待死のニュースは本当に辛いです、周りの大人たちが気づいても、一度は保護しても、救えない子供の命、なぜか、それは大人目線のせいです。

① なんでも屋さん

離婚後に別れた悠季(子供)と再会した未夢(母親)は「ママと暮らしたい」と訴えた声に沿い、
『親権移動の裁判』を起こしたが負けた。

却下となる意味は【①子どもが手元にいる方が勝ち】だからです。その理由は『②子どもが暮らす環境を変えない』『③子どもを見る大人は? 家族の協力がるか、いか』。

上記の3点から判断する裁判は、未夢の負けだ。 判決の言葉に「子供が母親と暮らしたいのは当たり前、寂しいのも当たり前」よって「親権移動の理由にはならない」との事で却下。

でも、親権移動の理由の中に『父親の暴力』と『子供の怯え』も訴えた。
ところが、裁判官には何も伝わらなかった。それよりも『父親の家族が全員で子供の面倒を見る』という、大人のその場の都合のいい言葉で、裁判官たちの判決が下された。

判決結果を、何度も、何度も、繰り返し、見つめて、見つめて、、いる未夢・・、
悠季の必死な顔、たくさんの涙、「ママと暮らす」と叫んだ悠季の声が未夢を動かす。

『裁判に負けた=正当な道はない』と、判断した未夢は悠季を連れ出す事を決めた。

慎也と未夢は、再び、なんでも屋さんの事務所を訪ねた。
事務所の中へ入った2人が腰を下ろすと、慎也が裁判結果を報告した。

すると、

「そうでしょ、だから何度も言ったじゃないですか『裁判を起こしても無駄ですよ』と、
こういう場合は、子どもが手元に居る方が勝ちなんですよ。
僕たちは何度もこのような場面を見てきましたから、裁判とはそういうものなのです。
始めから、連れて来た方が良かったでしょ。」

誇らしげな笑みを浮かべる、なんでも屋さんの言葉は、後悔を促すように流れた。

「結果は負けてしまいましたが、“やって良かった”、と思っています。
後悔はしていません。」と、胸を張る慎也。

口を閉じて2人の会話に耳を澄ます未夢、
『裁判とは、そういうもの』・・とは、どういう意味?、法律は弱い者の見方じゃないの?
負けたのに『やって良かった』とは、何が言いたい?、それはあなたの満足度だよね・・、

じゃぁ、『裁判っていったい何?』  『誰のための裁判なの?』
第三者の意見が必要なときがある、両者を公平な視線から判断を下す、それが裁判じゃないの?
未夢の頭の中では裁判に対しての疑問が・・膨らむ一方だ。法律っていったい何だろう・・???

なんでも屋さんの誇らしげな声が消え、慎也の満足げな声も消えると、
事務所の中に漂う異空間の空気・・が、時を刻む・・その時、

「8月に悠季ちゃんを連れてこようと、考えています。
その時に、また、お手をお借りしたくて今日は伺いました。ご都合はいかがですか?」
笑みをこぼす慎也が問う。

「はい、判りました、それでは、幾つか、質問をさせて頂きたいのですが、
よろしいでしょうか?」と、声を掛けるとメモ用紙とボールペンを手にし座り直した。

質問内容は、偽善の性格から始まり悠季の行動パターンなどを、一つ一つを事細かく、未夢に対して質問と確認を繰り返した。その慎重さは、正に『失敗は許されない、チャンスを生かす』と、なんでも屋さんの姿勢が伝わってくる勢いだった。

その後は、連れてくる時の注意点と、連れてきた後の注意点を淡々と話していた。
口を閉じたまま聞き入る未夢は、呆然、現実を目の当たりにした緊張感に見舞われた。

慎也は、未夢以上に・・・硬直していた。

「はい、判りました、それでは、いつ頃を、予定されていますか?」
「お盆が過ぎた、日曜日に、予定しています。」と、慎也が応えた。

「では、8月18日土曜日の夜、岩手で会いましょ。」
「よろしくお願い致します」と、慎也と未夢は頭を下げて事務所を出た。

② 罪悪感が旅行気分に変わる時

なんでも屋さんから突きつけられた『現実』は、2人を押し潰した。
法に背いて行動を起こす事は、心に罪を埋め込む、この罪に心が痛む・・。

部屋へ戻った2人は、『罪悪感』に見舞われ・・・沈黙が続いていた。
そんな重い空気の中で口を開いたのは・・未夢、

「想像は付いていたけれど・・、
やっぱり連れてきた後が・・大変そうだね・・。

私、想像を超えるショックを受けた・・・、
あまりにも、現実味が有り過ぎて・・・、

  『みんな逃げ回っている・・』とか、
  『引っ越しを繰り返している人も・・』とか、
  『絶対に住民票は移動してはいけない・・』とか、

どれもこれも・・・辛い、自由を奪われたような・・・・・

住民票を動かせないって、やっぱり、“法を犯す”、と言う事だよね、
マッ、“偽善さんから逃げまわる”、と、言う意味だと思うけど、
どういう意味であれ・・内容が重すぎて、

想像はしていたけれど、
解っていたつもりだったけれど・・・、

やっばり、どこか、他人事、だったんだなぁ・・・、
今更、気づいた気分、なんか、ヘコむわ。」

未夢は事務所で聞いた話を、復習するように、確認をするように、ゆっくりと声に出していた、が、慎也の声は一向に聞こえてこない、未だに身体も顔も強ばったまま・・だった。

「あっ、そういえば・・さぁ、
『連れ出して最低でも、1週間は家へ戻らない方がいい』とも、言っていたでしょ、
それでね、
考えてみたんだけど、
家へ戻らないで、そのまま、1週間、旅行へ行かない?」

「そうだなぁ、旅行も、良いかもなっ、俺、休みとるよ」と、
見るからに放心状態だった慎也が・・、速攻で返事を返した。

その反応に驚いた未夢の視線が、慎也へ流れると、
未だに、どこか1点を見つめたままだった。

翌日・・、休日・・、と時を刻んでいくと、

部屋の中には、旅行パンフレットや悠季の衣類などが増えていく。
そんな時を刻んでいると、罪悪感が薄れ、旅気分が膨らんでいった。

「一週間・・、どこへ行く?」
「おいしいもの食べたいなぁ」
「温泉も・・いいなぁ」
「夏だし、海へ行こう」

会話までも弾み、ますます旅行気分が高まる、
未夢は1年前の悠季を思い起こし、成長を想像しながら買い物をする、
洋服、靴、帽子・・などなど、
悠季に必要だと思うものを一つ一つ買いそろえていく。

そんな時間は、悠季に会える、悠季を抱ける、悠季と旅行だ~ぁ、
この思いは、日を追うごとに旅行気分が膨らみ、罪悪感が消えていった、

そうして、1週間のスケジュールを組むと、
8月18日土曜日の夜、岩手にいた。

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