自分に嘘をつかないと約束して欲しい、いつでも、どんなときでも、自分に正直であれ、その姿こそが、きっと、自分への自信へと繋がると思うから。

⑰『可哀想』って言われたい(心の穴)

心が寂しがると・・何も浮かばない、そんなときは、
過去を振り返り同情をもらえる出来事を探して伝える、この流れはとても危険です。

悠季が小学校へ入学すると、間もなくPTAの集会があり未夢も参加した、そのとき、

「ねっ、貴方よね、『子どもが死んだのに生きている人』って、良く、生きていられるわね、
私はダメだわ、子どもが死んだに、自分だけが生きているなんて、信じられない、

なぜ、あなたは死なないの、 なんで生きているの。 (怒りと苛立ちを震わせる)
私だったら絶対に死んでいる。だって、子どもが死んだのよ。ねっ、ねっ。

生きていられる訳がないじゃない、 絶対に死んでいるわよね。 ねっ、ねっ、
貴方は、ほんと、良く生きているわね、死なないの? 

なんで、死なないの
信じられない、なんで生きていられるの、・・・・・・・」と、

何度も何度も同じ台詞を繰り返す、この人・・、
『子供が死んだら親は死ぬべきだ』と言い放し『なぜ、生きている』と罵り続ける。

この集会は親たちの親睦もテーマになっているため、1つのテーブルに5、6人が座りグループで話し合う形をとっていた。 約2時間が過ぎると、集会の終わりが告げられた、その直後に、

未夢の背後に座る、この人が声をかけてきた。
未夢が振り向くと、怒りの形相のままヒステリックに罵声を飛ばし始めた。

未夢を見て『何で生きているの、なんで死なないの』と、怒り。
座っているテーブルに体と視線を戻すと『ねっ、ねっ、おかしいわよね』と、同意を求める。

未夢は、突発的なこの人の行動や言葉に驚く、が、未夢を驚かしたのは・・他にもある。
解散の声が流れた直後のため、大半の人たちは、その場にいた。そして、その声はヒステリック的に甲高くそこそこ大声である。 つまり、この部屋にいる人たち全員の耳に届く、勢いだった。

同じテーブルに座っていた人たちは、全員口を閉じて、下を向く。
他の人たちは、聞き耳を立てて、話の内容を聞き入っている様子だった。

      誰1人として、この人の口を止める人は、いない

未夢は、罵声を飛ばす人、この場にいる人たち、誰1人として知る人はいない・・、
それなのに、言葉の暴力を振るわれる、この現状を『虐め?』なのかと横切らせた。

人は、見ず知らずの人にも、殴り続ける事が出来るのか・・と、違う意味でショックを受けた。

自分の思いは他人には伝わりにくい、また、意図しない方向から攻められる場合もある。

あれから、数日が過ぎた、ある時、

「虐められた、誰も遊んでくれない。」と、遊びに行った悠季が戻ってきた。
「じゃあ、ママとお話をしない?」と、未夢が声を掛けると、

悠季の頭上には沢山の疑問符が並んだ。

「悠季、悠季は良太が死んだ事をみんなに話しているでしょ、どうしてかな?」
「可哀想って言われたい。」

「そうか、可哀想って、言われたいんだ、」
「うん」
「そうだよね、悠季は、可哀想だよ、ごめんね。」

口を開かない悠季の顔には、疑問符が張り付き、頭が傾いた。

    心が『寂しい』と呟くと・・、
    過去の出来事から『可哀想』と思える話を探し、第三者に伝える。

    この流れは、一見、心を労っている・・ように見えますが、
    自分の心を労るよりも、心の病を悪化させてしまう行為なのです。

「ママはね、他人に『可哀想』って、思われるの嫌なんだ、
ママと悠季は、正反対だね。」笑みを広げる。

「どうして?」驚きの声を飛ばす悠季。

「良太は死んじゃったから、もう会えないけど、会えないから寂しいけど・・、
でもね、良太は、いつも笑っていたの、」

未夢はゆっくり良太の話を続けた。

「良太は、悠季が大好きで、お財布の中に悠季の写真を入れて、持ち歩いていたんだよ。
『かわいいだろう~、俺の妹なんだ、俺よりも頭がいいんだ。』って、
友だちやバイト先でも、みんなに、自慢をしていたらしいよ。」

にこにこしながら、未夢の話を聞き入る。

「悠季が歩くようになったら、良太、喜んでね、
『待っていました、この時を待っていたんだ。』なぁ~て、ねっ。

バイトが休みの日は『悠季かして』って、私に言うんだ。
それでね、悠季の着替えやおむつ、飲み物やおやつなどを入れた袋を持って、
嬉しそうに、悠季を連れて行くんだよ。

バイト先に連れて行ったり、
友だちと遊ぶときも連れて行ったりしていた。
悠季を自慢したくてしかたなかったみたいよ。

そんな悠季が、とても大切で、いつも心配していたよ、
学校の授業参観も、俺が行く、悠季が虐めに遭わないように、俺が守る、
なぁ~て、言っていたょ。

そうそう、死んでも悠季が心配で、毎夜、悠季に会いに来ていたよ。
その時の良太は、にこにこして、とても幸せそうな顔をして、
太陽が昇るまで、悠季だけをずーと見つめていた。
きっと、今でも、悠季のことを心配しているよ。」

良太の話が続く・・・。
そんな未夢の話を聞き入る悠季、
口は閉じられたまま、顔には優しい笑みを広げていた。

未夢は、良太の思いが、悠季に、ほんの少しでも伝わることを・・願う。

「本当はね、ママも良太の話をしちゃうんだ。
『お子さんは、何人?』って、聞かれたら
『上にもう1人、今は、別に暮らしています』なん~てね。」

悠季の顔に、ホッとする笑みが広がった、

「ママはね、悠季を産んだ事、良太を産んだ事、自慢なんだ。」

未夢の話はゆっくり続く。

「良太が死んだ時、ママの友だちは、みんな居なくなった。」
「どうして?」驚く悠季。

   可哀想と思われる事によって『友だちが出来る』と考えていた悠季にとっては、
   未夢が言った『友だちが居なくなった』の言葉に衝撃を受けた。

「親にとって、子どもを亡くしてしまう事は、一番、辛くて、一番、苦しくて、
一番、悲しい出来事なの、親は、自分の命なんかよりも子どもの方が、

ずーと、ずーと、比べものにならないほどに、大切なの、
だからね、子どもを失う事なんて、親は考えられないのよ

その子どもが、突然、死んでしまったら・・・・・、

そうね、親にとって子どもは、太陽みたいなもの。
だから、太陽が消えちゃうことなんて、考えられないでしょ、

その太陽が、突然、消えてしまったら・・・、真っ暗闇・・だ、もんね。
例え、沢山の子どもが居ても、親は、1人、1人が大切なのよ、

その子の代わりは、居ないからね。

つまりね、良太の代わりは居ない、
もちろん、悠季の代わりも居ない。
この世でたった1人なんだ、

そんな大切な子どもを失う・・辛さ・・苦しさ・・悲しさ・・、
その気持ちを理解できるからこそ、ママに声を掛ける言葉を失った・・、
だから、ママから去って行ったんじゃないかな・・ぁ、と思う。」

「だからね、ママは、良太が死んだ、という言葉は使わないの、
もしも、ママが言ったら・・、
聞いた人は、きっと、とても困ると思うから・・、」

悠季は、未夢の話を、まるで見守るように優しい笑みを広げて、聞き入っていた、

ところが、突然、

「死ぬのが怖い、死ぬのは怖い」と、怯えるように訴えた。

「そうだよね、それでいいんだよ、
だから、長生きしてね。ずーと、ずーと、生きていてね。」

「ママも」と、明るく言った。

あれから、数日が過ぎた時、

「結構、つらいんだよね、」から始まった、悠季の話は、
「友だちのお母さんから『きょうだいは、いるの?』って、聞かれるの、

『ひとりっこ』って、思われるのが嫌だから、
『いない』って、言いたくないし、

だからママと同じように『1人で暮らしている』って、言った。」
にこにこ顔で未夢に報告をした悠季。

ごく当たりに交わされる話の中に、聞きたくない話、応えたくない話、・・がある。
でも・・、怯えるよりも、うまく交わせるようになれる・・と、いいね。

悠季が言った『死ぬのが怖い』この言葉は、未夢と一緒に暮らし始めた当初から、度々、言葉にしていた。未夢は、ずーと気になっていた、

そして、この言葉の意味が、後に、悠季の口から語られた。

心の底に隠れている『寂しい』と、思う気持ちは『孤独を怖れている』

   ひとりぼっちがイヤだから
   『誰でもいい、ただ側にいて、遊んで、』と、その場しのぎを求める。

   これは、友だちを求めているのではなく、ただ、時間つぶしをしているだけなのです、
   1人で時を刻む事に怖れているから、自分の心を紛らすために時を使っているだけ、

   そんな遊びは、楽しむ事も出来なければ、心も満足できないのです。
   そんな心は、常に不安を抱えて、怯えている。

   この不安が厄介なのは、
   心だけが不安がるのではなく、行動にも表れる事、
   つまり落ち着く事もできないのです。

そんな子どもを、先生や親たちは、多動で問題児というレッテルを貼る、
すると、先生や親は、生徒や自分の子どもに遊ぶことを禁止する。

多動で問題児のレッテルを貼り付けられた悠季、気を紛らす事もできずに、時を刻む。
すると、ひとりぼっちでいる事に耐えられず、

心の中に、もう1人の自分を作ってしまう・・のかも知れません。

『なぜ、生きている』かぁ・・か、他人に言われなくとも未夢自身が、何度も何度も噛みしめてきた言葉だ、 だから『私自身が一番よく知っている』と、言いたかったなぁ。

 
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